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庭であり、遊び場であり、植物園でもある。
進化し続けるクレイジーガーデン。
GREEN LIFE 2023.12.28

庭であり、遊び場であり、植物園でもある。 進化し続けるクレイジーガーデン。

一見すると植物園のようにも見えるここは、正真正銘、一般住宅の庭。もともとは更地だった場所を、10年以上の歳月をかけて、見事なまでにアップデートさせた。手掛けたのは、庭師でもなければ大工でもない、会社員の橋本さん。「クレイジーガーデン」と名付けられたこの場所は、何を目的に作られ、どんな進化をたどってきたのか。

INFORMATION
橋本 玲地(会社員)
橋本 玲地(会社員)
はしもと・れいじ|普段は農業や地質調査、カフェ事業を手がける会社で働きながら、週末は自宅の庭でDIYを楽しんでいる。DIYの様子は自身のInstagramで発信中。2人の娘を持つ父でもある。

家を建てるなら、庭は絶対。

駅を降りてクルマで20分。千葉県の田園風景が広がるエリアに、橋本さんの自宅はある。周囲には幹線道路はなく、民家もまばらだ。橋本さんがこの場所に越してきたのは、いまから13年前。

「子供の頃は団地の5階に住んでいたから、庭なんてなかったんです。それもあって、庭に対しての憧れがずっとありました。そこから家族を持ち、家を買うとなったときに、第一条件は庭があるかどうか。そうして探し当てたのが、この場所だったんです」

広い敷地には住居スペースが3分の1を占め、残りの3分の2を庭が占める。庭と言っても、そこにあるのは芝生が生い茂っただけの一般的な庭ではなく、もっとワイルドな植物と、自分で建てた小屋が3棟、小高い丘なんかもある。

「もともとは、子供たちの遊び場を作ってあげようと思って始めたんです。それが、子供たちも大きくなって、遊ばなくなり、いつしか自分の趣味の場所になっていましたね(笑)」

枕木や廃材を使って、お金をかけずDIYを楽しむ。

この土地に越してきた13年前。そのときのありようは、いまからは想像できないほど、ひどい状態だったという。

「まず、周囲の施設の影響で、庭部分が50センチくらい、ほかの土地に比べて沈んでいたんです。建設会社に相談したら『整地はできないけど余った土は持ってこれる』と言われたので、大量の土を持ってきてもらって。なのでぼくの庭づくりは、ほかの敷地と高さを揃えるところから始まったんです。ゼロからじゃなく、マイナスからのスタートだったわけです(笑)。」

無事に土を敷き詰めたら、それだけではつまらないからと丘を作り、もともと好きだったという植物をいくつか埋めた。ちなみに、橋本さんはDIY初心者。動画などを参考にしながら、文字通りイチから、この場所を作っていったという。

「コストコ」の子供用遊具をカスタマイズして作った最初の小屋。

「ひと通り整備された頃に、義母が、子供たちのために遊具を買ってきてくれたんです。自分たちで工具を使って組み立てなきゃいけない巨大な遊具で、それを父親と2人で3日かけて作ったあたりから急にスイッチが入って、いろいろ作るようになった感じです」

植物のための玉石や土がストックされている小屋。上層へは階段からアクセスできる。

とはいえ、育ち盛りの子供が2人いることもあり、庭づくりに投じる予算も限られる。高い資材を買うことは、なかなか難しい。だから、「クレイジーガーデン」に使われる材料のほとんどは、廃材や使われなくなった枕木などがメイン。



寒さに弱い植物は、この小屋のなかで越冬する。

「枕木なんかは、柏市のほうで販売している人がいて、大きいものでも2000円くらいで買えてしまうんですよ。廃材も、家の小屋を解体して出たものとかを使っています。オブジェなんかも、近所の蚤の市で買ったものがほとんどです。よく驚かれるんですけど、トータルでかかっている金額は本当に少ないんですよ」

子育てと趣味。その両立は簡単なことではないけれど「やりようによって、どうとでもなる」と橋本さん。全力で遊ぶためには、いつだってひらめきが大切になる。

クレイジーなまでの植物愛。

お手製の小屋にどうしても目がいってしまうのだが、「クレイジーガーデン」最大の特徴は、植物の多さ。100種類以上、大小300以上の植物がある。

庭に何気なく生えているヤシの木に、多肉植物、エアープランツなど、数えればキリがない。多肉植物、エアープランツ、そのほかにも本当に多くの植物がそこかしこに広がっている。その熱のいれようは温室も作るほどで、小屋のなかには鉢に入れられた苗が無数に並び、いつか来る出番を待ち構えている。

「植物は春に根付かせて、夏は休ませてあげて、秋にまた成長させて、越冬させるというサイクルなんです。だけど、これがなかなか難しい。苗を含めてたくさんありますけど、根付かずダメになったり、枯れちゃったりするものも多いから」

「たぶん、やってるところは少ないですよ」と次に案内してくれたのは、庭の空いたスペースに作られたアガベの畑。

「アガベは、100年に1度花が咲くと言われているんですけど、花が咲いたあとに死んじゃうんですよ。そんなアカベのロマンチックさにやられて、この畑を今年から始めたんです」

ロマンチックなエピソードがもうひとつ。昔、橋本さんの愛娘が持って帰ってきたどんぐりの実。それを庭に植えたところ、すくすくと育ち、いまでは2メートルを超える大木になっている。そんな楽しみ方も、広い庭があればこそだ。

将来は大きなツリーハウスを。

橋本さんの庭作りに終わりはない。ひとつのことに取りかかれば、またひとつ、やりたいことが生まれてくる。いま、新たに取り掛かっているのは、レンガで作るアウトドアサウナだとか。

長期的な目標でいえば、クスノキにツリーハウスを作ること。巨木になる個体が多いことで知られるクスノキは、「クレイジーガーデン」にも植えられている。いまは、4メートルほどの高さになる。

「庭づくりって、どこまで行っても終わりがないんです。逆にいうと、飽きることなく、ずっと遊べるんですよね。妻にも娘にも呆れられていますけど、当分やめられそうにないです(笑)」

自然相手の趣味は、季節によって、その年によって、まったく状況が異なってくる。うまくいかないことも多いけれど、だからこそ、ハマると抜け出せない。

13年でここまでの「クレイジーガーデン」を作った橋本さん。たぶん、あと10年もたてば、また大きく様変わりしていることだろう。そのときはツリーハウスの上から、迎え入れてくれるかもしれない。

  • Photo/Kohei Kawatani
  • Text/Keisuke Kimura
LL MAGAZINE