- radin_outsideさん(自営業)
- らでぃん・あうとさいど|ヴィンテージとキャンプを趣味とし、キャンプに出掛けるときの相棒は1967年式のワーゲンバス。妻と2匹のフレンチブルドッグと共に、築100年超えの古民家に暮らす。
- Instagram - @radin_outside
時間を巻き戻すように、土間を広げるリノベーション。
radin_outsideさんが暮らすのは、築100年を超える古民家。古き良き日本家屋らしく、玄関を入ると広々とした土間が広がる。そもそも、彼が古民家暮らしを選んだ理由がヴィンテージ。大事に使い込まれたアイテムこそが持つ表情に惹かれ、radin_outsideさんが暮らす住まいもまた、深い茶色にエイジングされた梁や柱が趣深い。
「とにもかくにも古いものが好きなんです。この家に関しても、時間を巻き戻すようなリノベーションをしています。明治末期に建てられた古民家とあって、前の家主がリフォームをしたのでしょう。家を購入した当時は部屋が細かく仕切られ、せっかくの土間も狭くて。昔ながらの住まいの光景を取り戻したくて、土間を拡張しています」
その結果、土間の広さは優に20畳以上。チェストやハンガーにテーブルまでセットされ、さながら第二のリビングといった表情を見せるが、radin_outsideさんいわく「ここは何でもできる場所」。壁際のラックに収納されたクーラーボックスが物語るように、家主は大のキャンプ好き。土間はキャンプ道具の収納スペースとしても、メンテナンス場所としても機能する。
アウトドアの道具が生き生きと映える“半分野外”な土間。
「これはおそらく、アウトドア好きに共通した悩みですね。どうしても道具が増えてしまうんです。特に僕の場合はキャンプ道具に関しても、古いものが好き。実際にキャンプに持ち出すのはもちろん、コレクションという側面も大いにあります。大事なコレクションだけに捨てられず、増えていく一方。土間がなければ収納しきれません(笑)」
古いもの好きが選んだ、ヴィンテージの住まいと道具。しかも、土足で踏み入ることのできる土間は、インドアとアウトドアの顔を合わせ持つ。エイジングという共通点から住まいと道具が美しく調和するのはもちろん、半分がアウトドアの空間にキャンプのアイテムが映えるのは自然なことかもしれない。土間の随所に顔を出すランタンは、特に生き生きと映る。
「さすがは古民家ですよね。天井を抜いたところ、屋根裏部屋が現れました。養蚕のために造られたスペースのようですが、今は僕の仕事部屋兼、ここもキャンプ道具の収納スペースです。土間には出し入れが面倒な大物の道具を収納しつつ、屋根裏部屋には細々としたアイテムたちを収納していますが、ついつい眺めてしまいますね(笑)」
濡れた釣り竿も、釣り上げ魚を持ち込むのも何のその。
ここは何でもできる場所——。radin_outsideさんの言葉どおり、広い土間はアウトドアの道具を収納し、メンテナンスする場所であるのと同時に、住まいを訪れた友人をもてなす場所でもある。キャンプ用のテーブルとチェアを並べれば、10人以上を招いたホームパーティーも何のその。土間に収納された道具を眺めながら、仲間たちとキャンプ談義に花が咲く。
「これもキャンプ仲間の影響ですね、最近は毛針を用いた川釣りにハマっています。岐阜には川が多くあるので、釣りのスポットは家から一時間圏内。もう、毎週末のように釣りに出掛けていますね(笑)。ゆっくり妻も一緒に楽しめるし、さらに釣りの醍醐味は釣り上げた魚の味わいです。家に帰った後も楽しみが続きます」
実はradin_outsideさんの住まいは、キッチンも土間にある。すると、濡れたままの釣り道具を土間に持ち帰り、そのまま乾かせるのはもちろん、釣り上げた魚をキッチンに持ち込むにも躊躇は皆無。新鮮なままを捌いて味わうのも日常の光景だ。
「釣った魚を土間のテーブルで食べることもありますし、うちには囲炉裏もあるんです。焼いたアナゴなんて、最高の贅沢です。それに毛鉤を自作するのも楽しくて。土間の一角にテーブルを設けて、妻とふたりで黙々と没頭しています。ここなら、ちょっとゴミが落ちても気になりません。釣りを始めて、より土間を重宝するようになりましたね」
大事なのはメリハリ。いつもの食事を楽しむ場所も気分次第。
radin_outsideさんの住まいは4Kの間取り。どの部屋も土間と同様に広く、古き良き引き戸によって仕切られた空間ごとにインテリアの表情が変化する。囲炉裏のある客間は黒漆喰の壁とデザイナーズの照明のコントラストが美しく、縁側の壁は鮮やかなブルーに塗装。さらに北欧家具に彩られたリビングは、いかにも居心地のいいイメージだ。
「ひとつの場所にジッとしていられず、家でもころころと居場所を変えています(笑)。それだけに、部屋にはメリハリがほしくて。どのスペースにも好きなものを詰め込みつつ、印象の変化は意識していますね。土間を広く取り、キッチンまで土間にしたのもメリハリを付けるため。やっぱり土足とそうでない場所では、なんとなく気分が変わります」
普段の食事をする場所も気分次第。ヴィンテージの大ぶりな照明に照らされたダイニングで夕食を楽しむのはもちろん、ちょっとアウトドアな気分を味わいたいときには、土間が食事の場所となる。部屋ごとに表情を変える居住空間はもちろん、土間の存在もradin_outsideさんが大切にするメリハリに不可欠のスペースだとか。
インドアとアウトドア。その境界から始まり深まる、新たな趣味。
「もう2年くらいになるかな。ご近所さんに薪ストーブを譲っていただいて、そのままにしてあるんです(苦笑)。でも、いつかは土間に薪ストーブを設置したい。木造の古民家だけに、冬はどうしても冷えるんです。ここに薪ストーブが設置できれば、うちの土間は完全無欠(笑)。もっと、いろいろなことができるようになるはずです」
キャンプ道具の収納もメンテナンスもできれば、新たな趣味を深める場所にもなり、食事の場所にも、もてなしのスペースにもなる。インドアとアウトドアの両方の要素を兼ね備えた土間は、やはりフレキシブル。そうした空間に薪ストーブが設置されたなら、radin_outsideさんはまたきっと、新たに趣味を広げ、深めるに違いない。
- Photo/Chie Kushibiki
- Text/Kyoko Oya
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