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ハーフビルドで住まい・仕事・趣味を三位一体に。暮らしが丸ごと収まる家。
CULTURE 2024.10.03

ハーフビルドで住まい・仕事・趣味を三位一体に。暮らしが丸ごと収まる家。

自宅でヘアサロンを営み、時にはコーヒーショップとしてイベント出店をし、さらには古着屋のオープンも企画中。趣味や仕事で多岐にわたって活動する浜村さん夫妻は、家を建てるにあたって「店舗兼住宅」を選択した。手掛ける店舗スペースは、今後オープンさせる古着屋も含めてなんと計3つ。「自らの手も動かして、自分たちの理想を叶えたい」と、内装や家具など多くはDIYで、現在も2人の手による工事や製作は進行中だ。住居と店舗、そして趣味が共存する家づくりへの思いを探った。

INFORMATION
浜村翔吾/奈央(デザイナー・ディレクター/美容師)
浜村翔吾/奈央(デザイナー・ディレクター/美容師)
はまむら・しょうご/なお| ともに島根県出身。翔吾さん(@shogodesign)はコーヒースタンド『THE COFFEE STAND』のオーナーを務めるほか、『STARTUP design』でデザイン業にも携わる。奈央さん(@___n___a___o___)は美容師で『328hair』オーナー。店舗兼住宅として建てた住まいに夫婦と8歳・6歳・5歳の子供との5人暮らし。

間取りや建材選び、家具づくりまで。どれも自らの手とセンスで。

8年前、東京から地元である島根へUターンで帰ってきた浜村さん夫妻。生活サイクルができ、子供も大きくなってきたところで、家を建てる計画を進めはじめていた。美容師である奈央さんが独立を考えていたこと、翔吾さんが古着などを扱うヴィンンテージショップ開業の構想を練りはじめていたことから、2人の間で持ち上がったのは「店舗兼住宅」の選択肢だった。


「ヘアサロンだけでなく、僕らが好きな古着屋もやりたいねと話していました。イベント出店でやっているコーヒースタンドも、その中でできればなと。その3つと住居スペースが共存する家を建てるため、広い土地を探したんです」。

縁あって出合った土地は、店舗を兼ねた大きな家が建てられるのはもちろん、駐車スペースまで十分に確保できる広さがあった。その理想的な場所を存分に活かすべく、建築やインテリア、デザインが好きで、電気工事の知識と経験も持つ翔吾さんが本格的にウォームアップ。「遊び心のある家を思うように作ってみよう」と徹底的にこだわった家づくりがスタートした。

周辺の田園や山の緑と調和する、サヴォア邸をイメージした真っ白な外壁が印象的な外観。室内へ入ると、温かみのある木と白壁が柔らかな印象を作り出す。ダイニングと洗面などをつなぐアーチ型の開口部が空間のアクセントだ。

「ダイニングテーブルやキッチンの後ろに配置しているカップボードは、家を建てる前から愛用しているヴィンテージ家具です。この家具たちを軸に、LDKを構想しました」

間取りや細かな寸法を決めることはもちろん、建材の素材や色味なども翔吾さんが自らサンプルやカタログを取り寄せて、納得のいくものを探して建築家に提案していった。時間と労力を惜しまず作った空間には、お気に入りの家具が置かれ、家族のリラックスタイムに優しく寄り添っている。

キッチンの天板も翔吾さんが設計し、その下の収納部は家具屋に造作を依頼するこだわりっぷり。食洗器は日本では珍しいフロントオープンに、IHは天板に排気部のないフラットなタイプにするなど、細々したパーツまで使い勝手を考慮してセレクトしている。

家具の配置まで想定して建築図面を作成しているだけあり、カップボードの位置も完璧。お気に入りの食器やコーヒー道具、キッチン家電が並んでいる。

業者の手をまったく借りず、翔吾さんと奈央さんのDIYによって作り上げられたアイテムも多数。玄関から住居スペースに入ってすぐ目に飛び込んでくる、存在感ある下駄箱がそうだ。


「温泉施設によくある靴箱をイメージして作りました。すっきり整ったデザインになるよう扉の取り付け方を工夫し、中の棚板は位置を少しずつ変えているので、図面作成にかなり時間がかかったんですよ。この下駄箱は、最近完成した力作です」。

この家に住みながら、コツコツと家具や空間のDIYを進めてきた2人。生活空間のいたるところにお手製品が息づいている。

ワークスペースは現在進行形。セルフビルドで作り込む。

2階の一角は、最近完成したばかりだという翔吾さんの仕事場。フリーのデザイナーである翔吾さんは、自宅でも快適に働けるようにと、このスペースを作ることを前々から温めていたのだそう。

デザインや図面制作などの作業を行うほか、来客とのミーティングスペースとしての役割も持っている。デスク周りには、趣味と実益を兼ねて収集している建築、グラフィックデザイン、インテリアに関する雑誌をレイアウト。空間の有効活用のため、上部には梁と壁を生かしてスペースを確保し、趣味のキャンプ道具の一部などを収納している。

実はこの先に子ども部屋などが広がる予定。床や仕上げ、家具の選定などいまだ絶賛セルフビルド中。部屋と部屋をつなぐオープンな場所に図書スペースを設けてゆっくりと本を楽しめるようにしたり、2階からつながる屋上に手を加えたり、今後作り込んでいきたいという。夫妻の“家づくり”は、まだまだ終わらない。

夫婦の思い入れあるDIY家具が彩りを添える、自慢の空間。

住居スペースと同時進行で隣の店舗工事も進め、家の入居から約1年後には晴れてヘアサロンがオープン。奈央さんは壁の塗装を、翔吾さんはそれに加えて家具や照明なども手掛け、内装のほとんどを2人で仕上げていった。

「天井が高くて、外光が柔らかく差し込んで、窓からは景色が見えて。とても気持ちの良い空間です」と奈央さんご自慢の空間だ。

ヘアサロンへ入ってすぐの場所にある、荷物を入れるキャビネットとディスプレイ棚が特にお気に入り。リブパネルで作った棚は、奈央さんが理想のイメージを伝えて翔吾さんが手がけた共作だ。

海外から買い付けたヴィンテージのドアと合わさって、味のある佇まいになっている。

圧巻なのは、シャンプー台の横にあった収納棚。こちらは元々奈央さんの実家にあったもので、「自分のヘアサロンに置く収納棚は絶対にこれ!」と決めていたのだそう。


「扉など、使える部分をばらして持ってきてここで改めて組むことにしたのですが、少し特殊な構造でプロに依頼すると予算オーバー。それなら自分たちで何とかやってみようと作ったものになります。結果的に大工さんにも褒められるくらいの仕上がりになり、しかもそれが初めてのDIYだったので、夫のDIY魂に火がついてしまった形です(笑)」

奈央さんにとっては思い出の品のリメイク、翔吾さんにとっては初のDIY作品。夫婦にとってとても思い入れのある収納棚に仕上がった。

ヘアサロンに服とコーヒーが加わって。特別なひと時の提案を。

ヘアサロンの横には、翔吾さんが立つコーヒースタンドがある。店舗としての造りはほぼ完成しており、あとはグランドオープンを待つのみ。カウンターや収納棚といった家具類、内装類はもちろん、自らDIYで作ったものだ。

自家焙煎豆を使い、丁寧にハンドドリップ。これまではイベントへの出店と豆の販売が主だったため、今後はいつでもおいしいコーヒーを提供できるようになる。
ヘアサロンに来たお客さんにはスタンドにも立ち寄ってもらい、ここで淹れた1杯をお試し提供中だ。

さらにコーヒースタンドの奥は、古着屋のオープンに向けて内装工事中。「洞窟のような雰囲気で、壁をもこもこした仕上げにしたいと思っています」とのこと。どんな空間に仕上がるのか、完成が待ち遠しい。
アイテムはすでに集めはじめていて、メンズやレディースに加え、キッズも充実させていくという。「髪型を変えると、服も新しいものにチャレンジしたくなりますよね。そうしたトータルの提案もヘアサロンでできるようになるので楽しみです」

自分たちらしい空間づくりを目指して、セルフビルドはまだまだ続く。

住居スペースだけにとどまらず、3つの店舗スペースも自分たちで作るという、もはや家を超えて複合施設のような規模感。こだわるところは存分にこだわり、DIYを楽しみ、自分たちらしい場所作りに今もなお取り組んでいる。

「空間を作っていくことがあまりにも楽しいので、今は完成してしまうのが嫌だとさえ思っています(笑)」と翔吾さん。モノづくりの喜びと、いつかは作り終わってしまうことの寂しさ。この相反する思いも、DIY好きなら深く共感できることだろう。そんな情熱を日々注ぎながら、住まいと店舗がつながる家族の家作りはこれからも続いていく。 

  • Photo / Masahiro Ohno
  • Text / Akane Sumida
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