- 前田エマ(モデル)
- まえだ・えま|1992年生まれ、神奈川県出身。東京造形大学卒業。オーストリア ウィーン芸術アカデミーに留学経験を持つ。モデルを中心に、執筆やラジオパーソナリティ、ペインティングなど、幅広く活動。著書に『動物になる日』(ミシマ社)。ウェブサイト『ARToVILLA』で「前田エマのアンニョン韓国アート」、『Hanako』webで「前田エマの秘密の韓国」連載中。
- Instagram - @emma_maeda
今年の3月からソウルの語学堂(朝鮮語を母語としない人たちが通う語学学校)に通っています。私は数年前から韓国の文学や映画、音楽などに触れてきて、韓国の歴史やカルチャーにものすごく興味を持ちました。自分の目で色々なものを見てみたいと思い、こちらへ来ました。
語学堂には世界中から生徒が集まります。コロナ禍以降は特に、アジア圏だけでなくヨーロッパやアメリカ大陸からやってくる生徒の生徒もぐんと増えたようです。
語学堂の生徒たちが暮らしているのは、大きく分けると以下のような感じです。
・寄宿舎(学校が運営する寮のようなもの。食事は付かない。1人または2人部屋。学校の敷地内にあることが多い)
・下宿(主におばさんやおばあさんが運営されている。食事付き。一人部屋が多い。学校の近所にあることが多い)
・ルームシェア
・ワンルームでの一人暮らし
生徒たちは各々、自分のライフスタイルに合った場所を選んで住んでいます。私は日本にいた頃から、住み込みのアルバイトをしたりと、集団生活に慣れていたこともあり、寄宿舎か下宿がいいなと思っていました。このふたつは安いですし…。最初、下宿は食事付きなのでいいなと思ったのですが、下宿の多くは半年以上からの受け入れ。当初は3か月だけの短期留学の予定だったので、寄宿舎にしました。
私は2人部屋。この写真と同じ机とベッドが向かい側にも1セットあります。ちいさなクローゼットも各自ひとつあります。韓国ドラマ『二十一、二十五』で、主人公の女の子がライバルと同じ部屋で暮らすシーンがありますが、まさにそんな感じ。
ルームメイトはオランダ人の女の子。年下ですがとても大人っぽく、親切で助けられています。韓国語も私よりも上級なので、毎日勉強になります。ルームメイトと生活スタイルや性格が合わなくて、寄宿舎を出ていく人も少なくないので、私はラッキー!(笑)
食事は自炊です。各階に共有のキッチンがあるのですが、コンロもレンジも冷蔵庫もひとつしかないので、凝った料理はしにくいです。時々、キッチンでみんなの様子を観察したりするのですが、カップラーメンを食べている人がやっぱり一番多い。寮では飲酒が禁止なので、飲みたくなると近くのコンビニへ行きます。韓国のコンビニは、店前にテーブルと机があるので、そこで食事をしたり、飲んだりする人も多いです。
こちらのスーパーでは、卵とかも何十個とかの単位で売っていて量が多いので、ひとり暮らしの人は大変です。韓国は現在、日本よりも平均年収も高い。それもあって物価も上がっているのかな。昔の韓国のイメージって“日本よりも安い”だと思うのですが、結構高いな…というのがこちらに来ての印象です。市場は、ものすごく活気があるし、スーパーではとても高い野菜も手頃な価格で買えます。広蔵市場はものすごく楽しいので、是非行ってみてほしいです。
韓国では食事の際にバンチャンと呼ばれるおかずが、日本では考えられないくらいの品数で出てきます。学校のそばにある食堂はバンチャンが美味しいので、そこで野菜をチャージ。とにかく食事が美味しい国なので、少なくとも3日に一度くらいは外食しちゃいます。学食もありますよ。韓国は午後2時くらいから夜の営業時間まで閉まってしまうお店が多いので(学食も!)気をつけないといけません。
韓国人の友人のご実家に遊びに行った時に、キムチ専用の冷蔵庫をはじめて見ました! 各家庭でキムチの味も、内容も違うというのはよく聞くけれど、友人のお母さんの作ったキムチが本当に美味しくて、お土産にたくさんもらいました。寮でいつも食べています。
美大で学んでいたこともあるし、今現在、韓国のアートについて書く連載も持っているので、美術館にはよく足を運びます。とにかく若者が多い! チケット制のところが多いのですが、すぐに売り切れてしまうし、平日に行ってもかなり混雑しています。韓国の若者がどうしてこんなにもアートへの関心が強いのか、ものすごく気になっています。
日本だと、若手のアーティストがアトリエを構える場所は、都心を少し離れたところが多いです。アトリエって、多少の広さが必要なので、家賃が安いとありがたいですから。でも、韓国では大都会である若者の街・弘大(ホンデ)に、アトリエが多いんです。弘大には弘益大学という韓国で一番有名な美術大学があるし、ライブハウスなどもあり文化が盛んな街。友人がシェアアトリエを借りているので見せてもらいました。日本では大学生でアトリエを借りる人はものすごく少ないけれど、韓国では大学内で使用できるスペースが少ないそうで、そのアトリエには大学生もちらほら居るそう。他にも、陶芸で作品を作っているアーティストの友人がいるのですが、彼女のアトリエも弘大にありました(写真は彼女に陶芸を教えてもらっているところ)。
日本では、たとえば京都などでは、歴史的建造物のそばには高い建物を建てなかったりして景観を守っていますが、韓国に来て面白いと感じたのは、景福宮などのすぐ後ろにビルが建ち並ぶ風景です。それと似たような感覚を、ソウルから少し離れた果川へ行った時にも感じました。団地が建ち並ぶ風景の中に突然、畑が! しかも市民の人たちが育てている様子。韓国ではこういう갑자기 (カプチャギ・突然)な風景に出くわす機会が多いような気がします。
ソウルでは朝から営業しているカフェがものすごく少なくて、やっていたとしてもチェーン店ばかり。モーニングをお店で食べるという文化があまりないイメージです。朝からやっているお粥や干し鱈のスープのお店なんかは、おじさんたちか観光客しかいない…。でも生活してみると、朝からやっているベーグル、パン、そしてレストランもあって、開拓していきたいと思っています!
暮らしてみて思うのは、どこの街に暮らすのかで自分のライフスタイルは大きく変わるのだということ。そして、街というのは、今までの歴史の積み重ねによって、作り上げられているということ。どんな人が多く暮らしているのか、街の雰囲気、そういったものの背景を知ることが楽しいなと思います。
東京で生活したり、自分の家で暮らしていると“まあ、こんなものだろう”という曖昧さに対して疑問を持たないけれど、ソウルで生活することで様々な違いに対して好奇心が芽生え、知りたいと思う、そんな自分に出会うのが楽しいです。
- Snap photos & Text/Emma Maeda
- Photo/Kasumi Osada
- Edit/Shoko Matsumoto
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