音楽家が集まる家。ここで生まれる音楽と軌跡。
家を舞台に、さまざまなクリエイターとHOME STORIESの表現を探求する映像メディア『filmbum』。クリエイターたちが、エンターテインメントな日常を映像化したら、どんな作品が出来るのだろうか?今回は、日本を代表するジャズヴォーカリストのTOKUさんにインタビュー。楽曲はどうやって作られるのか? 制作の過程を記録した本作品の見どころや裏話、家への想いを聞いてみた。
- T O K U(ジャズヴォーカリスト/フリューゲルホーンプレーヤー)
- とく|日本唯一のヴォーカリスト&フリューゲルホーンプレーヤー。2000 年にアルバム”Everything She Said” でソニー・ミュージックよりデビュー。 当時から注目を集め、その年の8月には早くもブルーノート東京に出演。一躍日本のジャズトップシーンの仲間入りを果たし、ジャズの枠を超えた幅広い音 楽性から平井堅、今井美樹、大黒摩季などのアルバムに作曲家、プレイヤーとして も参加。2008 年発売のアルバム「Love Again」では初のDust Song としてEXILEのATUSHI を迎え収録。 また2011年3月の東日本大震災直後に行われたシンディー・ローパーの国内ツアー にも参加した。 まさに本籍Jazz、住所不定のTOKU ならではの活躍を続けている。 近年では欧州、米国、アジア各国と様々な国の音楽やアーティストの共演も行い、 ライブやイベントに出演している。2020 年にフランスでレコーディングを敢行したアルバム「TOKU in Paris」をフランス、日本の2 ヶ国で発売し、国内外と活動の場を広げている。
- 公式サイト
楽曲を作り上げていくプロセスをフィルムに収めたい
今回の作品の舞台はDoliveの住宅商品「WTW HOUSE(ダブルティーハウス)」。ハウスセッションのように、音楽を愛する仲間たちと心の通った親密な時間を過ごしたいという想いから、「WTW HOUSE」の特徴でもある西海岸テイストな内装をチェンジ。よりアットホームな雰囲気になるよう、壁中にアートやレコードを飾ったり、棚にオブジェや本を並べて、小さなギャラリーのように仕上げた。
ジャズシンガー・TOKUさんのアイデアからスタートした『ミュージック・イズ・ホーム』は、アーティストたちが普段どのように楽曲制作を行っているのか。どんなやりとりを経て曲が出来上がっていくのかを、ドキュメンタリー形式で撮った作品だ。作品の出発点は、“ジャズを継承していきたい” という想いだったそう。
「ジャズって古い、取っ付きにくいイメージがあると思うんですけど、若いアーティストと組んだり、暮らしの中心である家を舞台に、即興で音楽を作っていくというチャレンジングな試みをすることで、若い方にも興味を持っていただけたらなと。オファーをいただいた時は驚いたけど、一般の住宅で自由に演奏するなんて日本ではあまり出来ないから。貴重な経験でしたね」
聞けば、アメリカでは家と演奏の距離が近く、“ハウスセッション” は頻繁に行われるのだそう。
「お互い友人を呼び合って、自由参加で好きな音楽を演奏するんです。ハウスセッションに大御所アーティストが来ることも多々。ピアノがやけに上手いな〜と思ったら、あのアンソニー・ウォンジーが弾いていたこともありました」
この家だからこそ、自然と降ってきた音とサウンド
見どころといえば、TOKUさんの脇を固めるメンバーの錚々たるや。ボーカルとリリックを担当したクロエさんは、かの有名なアカペラ・コーラス・グループ「TAKE6」のメンバーを父に持つ。さらに、ドラムの沼澤 尚さんも、キーボードの森 俊之さんも、日本ポップス界のレジェンド的な存在。本作品でプロデューサーを務めた田中義人さんも、数多くの名曲を生み出してきたギタリストだ。
「みなさん音楽の道を知っている、絶大な信頼をおけるメンバーです。僕がやろうとしていることをわかってくれる人だし、間違いないサウンドにしてくれると思って、声をかけさせていただきました」
そんな豪華メンバーが 海を見渡せる立地に建つ「WTW HOUSE」のリビングに集まり一曲をカタチにしていく。アーティスト同士が醸し出す独特の雰囲気、いいね!とひらめいた時の表情、ふと笑いが起きる瞬間。さまざまな感情と感情が交差する本作品は、創作の過程を余すことなく収めている。TOKUさんも「初めての経験に対する新鮮さや悦び、戸惑いみたいなものが凝縮されていて、自分が出演していることを忘れて見入ってしまった」とコメント。
そうして完成した楽曲は、包容力溢れる心地よいメロディラインに、スモーキーなTOKUさんの声と、繊細さと芯の強さが同居するクロエさんの歌声が重なり、思わず身体を揺らしたくなるような、気分を軽やかにしてくれる一曲になっている。
「家は僕にとって、暖かいところであり、家族と過ごすところであり、一番落ち着ける場所。普段の環境に近い空間だったからこそ、自然と降ってきた歌詞とサウンドだったと思います。レコーディングスタジオは、設備は整っているけど、閉鎖的だし自然光なんて入ってこないから(笑)」
音が出来ていくまでのプロセス自体がエンターテイメント
最後にTOKUさんが考える「エンターテインメント」とは一体何なのだろうか。
「まさに普段のミュージシャンの姿というか。メンバーと集まって、モチーフを共有して、音が出来ていくまでのプロセス自体がエンターテイメントだと思っています。感情が伴い、自然と生み出されるものとでもいうのかな」
TOKUさんが考える、エンターテイメントの “真ん中” を捉えた本作品。これからこの作品を観る人たちに伝えたいことを聞いてみた。
「このご時世、ネガティブな情報に振り回されてしまいがちだけど、この作品を通して希望でつなぎ止めたいというか、少しでも前向きな気持ちになってくれたら嬉しいです。僕らミュージシャンは、微力ながら世界が平和になればいいなと思って音楽と向き合っているから」
楽器を通じて会話するようなセッションの様子や音楽家としての葛藤など、制作の過程を生々しくも臨場感たっぷりに記録した本作。ぜひ、お気に入りのドリンク片手にチェックしてほしい。
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