ハライチ 岩井勇気の「アニメと部屋」
お笑いコンビ・ハライチの岩井勇気さんは、毎シーズン放映されるほとんどのTVアニメをチェックしているという。家を最高のエンタメ空間として楽しんでいる岩井勇気さんに、アニメの世界に浸るためのコツを聞くと「登場人物の家や部屋を妄想するんです」と意外な答えが! 『ヤマノススメ』、『イエスタデイをうたって』、『ギャルと恐竜』に登場する愛すべき3つの部屋を紹介。みんなもアニメ部屋沼にハマるかも!
- 岩井 勇気(ハライチ)
- いわい・ゆうき|1986年7月31日生まれ、埼玉県出身。幼稚園からの幼馴染である澤部佑とお笑いコンビ「ハライチ」を結成し、2006年にデビューを果たす。エッセイ集『僕の人生には事件が起きない』『どうやら僕の日常生活はまちがっている』(新潮社)ほか、自身が原作・プロデュースしたゲーム『君は雪間に希う』、そして原作漫画『ムムリン』も好評発売中。
- Twitter - @iwaiyu_ki
アニメの世界観に浸るなら、まず主人公の人物像がわかる部屋を観察すべし!
「毎クール、ほとんどのTVアニメを録画して見ていますね。ひと通り目を通して、気に入った作品を25くらいに絞って最終回まで追いかけます」と、さらりと笑顔で語る岩井勇気さん。アニメ&アニソンマニアという噂は本当だった…! 最近、アニメファンの間でも、彼の深い考察に注目が集まっている。そんな岩井さんは「アニメを観るなら、キャラクターが生きている家も観るべき」と語る。その真意とは…?
登場人物が過ごしている家は、情報がいっぱいあるんです。どんなものが好きか、どんな趣味があるか、どんなことを考えてるか…。それこそ、その人の経済事情もわかっちゃうわけで(笑)。「やっぱりこういう家に住んでるよね」とか「意外とお金持ち!」とか、キャラクター性を知るのに最適だと思っていて。アニメのファンブックに、登場人物の家の間取りが載っていることもあって、好きなアニメはけっこう資料を見て妄想してます。
『ヤマノススメ』あおいの部屋は、気分によって贅沢に使える圧倒的に広い女子空間!
ひとつ目に選んだ『ヤマノススメ』は、女子高生のあおいとひなたたちが、山登りに挑戦する姿を描く“ゆるふわアウトドア”作品だ。幼馴染の2人は、高校で再会。インドア派で高所恐怖症の主人公・あおいは、山好きのひなたに「昔一緒に見た山の朝日をもう一度見よう」と登山に誘われる。嫌々ながらも近所の山から登り、道具を選び、山料理を楽しみ、自然を愛する仲間と出逢いながら、次第に山に惹かれていく。岩井さんが注目したのは埼玉県・飯能にある、あおいの部屋。モダンな内装で友達が大勢来てもゆったり座れるほどに広い!
とにかく広そうな一軒家は、見えないところまで想像できておもしろい!
あおいちゃんの部屋は、モノはあるんだけどすっきりと整っているんです。ピンクを基調にまとめられた部屋で、かわいい女の子たちがほっこり過ごしてるけど、「これ、めちゃくちゃセンスあるよね!」ってじわじわ気になっちゃいましたね。高校生らしさもありつつ、彼女のセンスもうかがえるというか。親がこうしたいって思ってる家の雰囲気を壊さないように、彼女も部屋を作ってる気がする。洗練された家全体のコンセプトを理解して、自分の空間もコーディネートしているんじゃないかな。あおいちゃん、すごい(笑)。
あと、部屋の中に小さい階段があって、小上がりのような空間が用意されていて、部屋が区切られている。それがいいんです! ひとつの広い部屋より、エリアによって用途や気分を変えられる間取りの方が好き。さらに、小上がり側の壁が一面窓なんです。自然光がたっぷり入って、毎日気持ちいでしょうね〜。旅館の部屋で、障子を開けた先にある、ちゃぶ台と椅子2つがある細長い空間みたいな感じ?(笑)ゆったり外を見たり、じっくり本を読んだり、ちょっと特別な場所になりますよね。広さといい小上がりといい、映ってないところも想像させる部屋って、見ていて楽しいですよね。ちなみに、あおいの部屋ではないですが、ひなたの家にも注目してください。ログハウス風のオシャレな家で、お風呂、旅館くらいデカいですから(笑)。
- 『ヤマノススメ』
- テレビアニメ「ヤマノススメ」シリーズ再放送、TOKYO MXにて毎週月曜日19時より放送中ほか、各種配信サービスにて配信中。 ヤマノススメシリーズ最新作「ヤマノススメ Next Summit」 2022年10月放送予定。最新情報は公式Twitter(@yamanosusume)まで。
- 公式サイト
『イエスタデイをうたって』リクオの部屋は、かつて思い描いた理想と憧れが満載!
2作目は男女4人の人生と恋の行方を描く『イエスタデイをうたって』。リクオは、大学を卒業してからコンビニのアルバイトをして暮らしている。将来に対して焦燥感を抱え、生き方を模索する彼は、ある日ミステリアスな少女・ハルと出逢う。破天荒な彼女に振り回されながら過ごす中、かつてリクオが憧れていた同級生・森ノ目榀子が、東京に戻ってきたことを知る。さらに、幼馴染の榀子に思いを寄せる少年・浪が現れ、榀子の過去が明らかになっていく。取り挙げる部屋は、リクオが住むアパートの和室。最小限の家具と趣味の写真が置かれたワンルームは、温かい雰囲気を醸し出す。
気になる子と過ごすのに、なんでも手が届く八畳間がちょうどいいんですよ。
リクオの部屋には、僕の理想のひとり暮らしが詰まってるんですよね。中学生の頃に原作の漫画を読んでいて、「将来、こういう暮らしをするのかな〜。ちょっと不思議な女の子と出会って、いつのまにか半同棲みたいな感じになって…」なんて、ずっと妄想してたんです。大学時代や就職するまでの期間の自由な時間に、無限の可能性を感じて、強く憧れていて。リクオの部屋みたいにアパートの2階にある、畳が敷かれた1Kやワンルームで、何もすることないから朝4時までファミコンしちゃったり。でも、大学にも通わなかったし、就職もしなかったし、半同棲もしたことないし、リクオのような時期はずっと実家暮らしだったから、本当に憧れで終わりましたね。ひとり暮らしは30歳になってから始めたので、いい部屋に住みました(笑)。
今でも、コタツを中心に、生活用品や趣味のアイテムなど、すべてが手の届く範囲にある八畳間くらいの雰囲気、好きなんです。それこそ、部屋から生活水準や家賃がわかるじゃないですか。たぶん月6万2000円。しかも、大家のおばちゃんが「あなたがんばってるから」って、もともとの6万5000円から安くしてくれてる感じ(笑)。ブラウン管のテレビも低い木のタンスも味がある。夜はラジオでも聞いて過ごしてるのかな。
アニメ本編では、リクオが女の子にごはんを作ってもらっているシーンがあるけど、僕なら遊びに来た女の子に「これうまいんだよ」とか言って、不器用ながら手料理を振る舞ったりして。そんな中、女の子が畳に積まれてるCDをふと見て「ちょっと聴いていい?いい曲だね」って、彼女が僕の好きなアーティストにハマっていっちゃたり…。こんな楽しいやりとりができるのは、やっぱり八畳間くらいがちょうどいいんですよ(笑)。
- 『イエスタデイをうたって』
- 冬目景が描く青春群像劇がアニメ化。全12話をdアニメストアほか、FOD、U-NEXTそれぞれで配信中。
- アニメはこちらから
『ギャルと恐竜』楓の部屋は、女の子の家で見た記憶の断片が転がってる。
3作目は、ギャルと恐竜がひとつ屋根の下仲良く暮らすほっこりした日常を描いた『ギャルと恐竜』。コンビニでバイトをするギャルの楓は、ある日酔った勢いで恐竜を拾ってきてしまう。どんなことが起きても深く悩まない楓と、言葉は話さないが、言語を理解して身振り手振りで会話する恐竜の、不思議な同居生活がスタートする。アニメの舞台は楓の部屋が多く、ピンクで揃えられた家具やゼブラ柄のアイテムなど、絶妙にギャル味のある部屋の様子を覗くことができる。すべてコンパクトにまとめられ、(意外に?)整頓されていて、居心地が良さそうだ。
愛嬌のある女の子って、毛足の長いラグ敷きがち、壁にワンピース掛けがちですよね?
楓ちゃんの部屋は、女の子の家に泊めてもらったときに見たリアルな要素が詰め込まれてるんですよね。たまたまかもしれないけど、若いときの女の子って、ピンクを使ったカーテンとか、アニマル柄のクッションとか、中途半端な大きさで毛足の長いラグとか使ってません? さらに、小さな白いタンスの上に化粧品が並んでたり、コルクボードに元彼との写真を貼ってたり、絶妙な場所にワンピースを掛けてたり、ディテールが生々しいんですよね。もっというと、この部屋って基本ブラウン系のウッディな色味だけど、ピンクの空間にもっていってるところも、“ギャルの楓ちゃんらしいな”って思うんです。
このアニメは、一緒に暮らすギャルと恐竜を「かわいいな〜」って眺める作品ですが、男子はやっぱり恐竜を自分に重ねて見ちゃう。だから、観終わったときに、なんか女の子の家に泊まった感覚になる(笑)。楓ちゃんも、恐竜がずっといても何も言わないし、あるエピソードでアルバイトに行くときに、鍵を渡すんです。勝手に2人の間で「あ、何かが始まったな」って思いました(笑)。僕だったら、なるべく引き出しを開けずにじっとしているけど、一箇所だけちょっと見ちゃうかも。
ちなみに、女の子のベッドって想像以上に柔らかくないですか? 掛け布団も絶対ふわふわ。僕の意見ですが、大人になると腰痛めるからやめなって教えたい(笑)。他にもテレビの下に敷いたラグとかもなんだか気になるし、すべてが愛らしいですよね。あと、今思い出したんですけど、実家で暮らしているとき、うちの母親も大型スーパーの日用品売り場で買ったようなゼブラ柄のカバーを買ってきてましたね。僕にとって『ギャルと恐竜』は、いろいろな懐かしい思い出とリンクしているアニメだから好きなのかもしれない。
- 『ギャルと恐竜』
- 原作・森もり子氏/漫画・トミムラコタ氏による講談社「ヤングマガジン」連載作で、アニメ&実写でW映像化された。Blu-ray全4巻発売中。
- Blu-rayはこちらから
硬めのビーズクッションが2つあれば、何時間でもアニメを観続けられる!
――最後に、「自分の理想の部屋をつくるとしたら」というお題で、今回挙げてもらった3つの部屋から、特に好きな要素を選び出してもらった。また、今住んでいる家での岩井さん流のこだわりについても聞いた。
正直、『イエスタデイをうたって』のリクオの部屋くらいの規模がいいんですよね。彼と同じように、アパートの2階。コタツを真ん中に置いて、寝るときはその横に布団を敷く。実家でずっと布団で寝ていたんで、実はいまもベッドの横に布団敷いて寝ていて。腰に一番いいんですよ(笑)。そして、布団を敷くならやっぱり畳がいい。ひなたちゃんの家の大きな窓も取り入れたいですね。自然光が入ると気持ちがいいですから。部屋選びで、日当たりはかなり重要視しています。
あと、枕元にあるCDコンポもいい。本体とスピーカーをブックエンドみたいにして、数枚のCDを挟んでコレクションして。女の子が来たときにCDをふと見て「ちょっと聴いていい? いい曲だね」って言ってね(笑)。それから徐々にその子と一緒に住むようになって、「私の棚、作るから」って、楓ちゃんの部屋にあるようなカラーボックスと100均の鏡を買ってきて、次第に僕のものとテイストが混ざり合っていって…。幸せだなぁ(笑)。
――楽しそうな顔で理想を語ってくれた岩井さん。ちなみに、今住んでいるリアルの家でのこだわりはというと…。
僕が今の家でこだわっているものは、掃除機とビーズクッション。床が白いフローリングなので、落ちた髪の毛が目立つから、2箇所に掃除機を置いておいて、気になったらすぐ吸引。もともと掃除が好きなので、毎日こまめにきれいにしてます。そして、大量のアニメを快適に観るために2つの大きなビーズクッションを買ったら、最高でした。
アニメに登場する部屋を、今までなんとなく見ていたかもしれない。だけど、画面の片隅にちょっと目を向けるだけで、物語や登場人物に愛着が湧いて、こんなにも作品を(そして、妄想を?)楽しめるなんて…。好きな過去作を振り返るのもアリ。これからもますますアニメが観たくなる!
- Photo/Teppei Daido
- Styling/Yuko Kayama
- Hair&Make/Tomokazu Kameda
- Text/Hisamoto Chikaraishi(S/T/D/Y)
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