- guri(会社員兼古着屋オーナー)
- IT業界で働きながら、週末は古着屋「ADV. garage store」のオーナーとして、オンラインやイベントで、自身で買い付けた古着を販売する。これまで訪ねた国は20カ国以上。今夏はケニア旅行を控えている。夫と愛犬ポテトの2人+1匹暮らし。
- Instagram - @guri__no__ie
自分たちは、どんな暮らしをしていきたいのか。
広い川の土手に建てられたguriさんのマイホーム。2階にあるリビングの窓から望む景色は、東京であって東京にあらず。のどかな自然の風景が広がっており、軒先にはいま、つばめが巣を作っている。
そんな場所に2人が引っ越してきたのは、いまから4年前のこと。
「結婚したのが2012年だったんですけど、その頃から夫が34歳で家を建てることを決めていたんです。そして計画通り、お互いが34歳になる2020年に、この家を建てました」
家を建てるときに考えたことは「自分たちは、どんな暮らしをしたいのか」。その理想を叶えるために土地探しに奔走したという。
「建てたい家の図が頭にあって、実現するにはなにより場所が第一だったんです。例えば、カーテンを閉めないで生活したい。そうなると都心ではなかなか難しいじゃないですか。川沿いであれば人の目も気にならないし、景色の抜けもいいですから。他にも、雨の日にテラスで本を読みたいというのも夫の要望としてあったので、濡れないように屋根を飛び出した設計にしていたり。デザイン云々を決定したのは家作りの最後のほうでしたね」
明確に機能が分かれた3つの空間。
そうして完成したマイホームは3階建て。
アクティブな趣味を持つ2人は、出先で服が汚れることも少なくない。だから1階は、クルマで帰宅した流れで衣類を洗濯機に、そこからすぐにシャワーを浴びられる動線を作った。そうすることで、汚れを部屋に持ち込むこともない。
1階の大半を占めるガレージはご主人たっての要望だった。
「夫は長いことアメリカに住んでいたので、その生活のイメージが頭にあったんです。だからインナーガレージを作ることは絶対でした。いまではわざわざ玄関を通らずに、ガレージにある勝手口から出入りすることもあるんです」
ガレージの奥には、2人の共通の趣味であるキャンプやゴルフ、スノーボードなどのアウトドア道具が収納できる土間収納スペースも用意。出かけるときには、上のフロアに取りに行かずとも、モノを出し入れができる設計にしたという。
玄関を入ってすぐの場所にある階段を登ったら、多くの時間を過ごす広々としたLDKがある。
先述した大きな窓。ここからの景色は2人のお気に入りで、季節のうつろいによって、景観が変化していくという。春は桜、夏は青々とした緑、秋は赤く色づいて、冬は100羽近くの白サギが飛び交うといった具合に。
キッチンは、guriさんの理想が反映されている。
「キッチンとダイニングが繋がっている作りにしたかったんです。既製品だと難しかったので、ここは造作してもらいました」
キッチン正面にはカウンター、キッチン横にはダイニングテーブル。料理を運ぶ手間も省ける作り。食事はそのどちらかで食べることがほとんどだけど、外が気持ちいい季節はテラスで食事をすることもある。
このフロアは遮るものがなく、空間が繋がっていてとても開放的。友人を招くことも多く、大所帯になったとしてもこれだけの広さがあれば窮屈になることもない。
このフロアには、多くの照明が設置されているのも特徴的。形、色、趣向がそれぞれ異なり、部屋にいいアクセントを加えてくれている。また、ひとつのスイッチですべてが点灯するわけではなく、細かく調節できるよう壁面にはたくさんのスイッチがある。
光は家の印象を左右する。加えて、その日の気分でライティングの好みも変わってくるというもの。あえて全体を照らす照明はなく、小さな光を調整し、毎夜、ライティングの設定を変えているという。知人たちからは「電気ハウス」と呼ばれているらしく、それほど照明が多いのだ。
そして3階。とはいっても、2階は吹き抜けになっていて3階と繋がっている。ロフト仕様で、さながら秘密基地だ。ここにはベッドのほかに、壁面いっぱいに好きな漫画がずらりと並ぶ。
「漫画の棚も絶対欲しかったんですよね。2人とも、寝る前に必ず読むのがお決まりです。そのまま寝落ちするのもお決まりなんですけど(笑)」
動物と海外。共通の趣味が家に彩りを与えてくれる。
2人には共通の趣味がある。アウトドアアクティビティもそうなのだが、一番は海外旅行と動物だ。
というよりも、動物に会うために海外旅行を繰り返している。これまでもタスマニアでタスマニアデビルを、アラスカではシャチを、ガラパゴスでは海イグアナを見てきた。今夏は、ケニアのサバンナを訪ねるという。
「趣味の中心には動物があることは間違いないです。それを見るために、年に1回から2回は必ず夫婦で海外へ行っています」
現地で動物モチーフのオブジェや民藝品などを購入しては、家に持ち帰ってくる。それを繰り返した結果、guriさんの家の中は各所で海外の香りを感じとることができる。インテリアもそれに合わせて、海外のヴィンテージのものが多い。
「家を建てる際のコンセプトとして、箱だけを作ろうとしていたんです。テイストとかは決めずに、なにが置いてあっても違和感のない家にしたかった。行く国が違えば、民藝品のテイストもまったく違うじゃないですか」
くわえて、guriさんは飽き性でもあるという。インダストリアルな雰囲気が好きだったときもあれば、オリエンタルなムードに包まれたくなる時代もある。ビンテージに傾倒するときもあれば新品にしか目を向けないときもある。
「そのときどきで、好きになったものを買い足してできたのがいまの家です。収拾がつかなくなっちゃいましたけど(笑)、いまになって、本当によかったなと感じています。この家であれば、どんなものも受け止めてくれるから」
趣味が変わっても、どれだけ年を重ねようと、ずっと好きでいられる家づくり。
家を建てるとき。多くの人はこれからの人生とライフスタイルを想像し、そこから最大公約数を算出する。
けれどguriさんは違う。
そのときどきで足したり引いたりできるよう、ベースは極力シンプルに。趣味が変わっても、どれだけ年を重ねようと、ずっと好きでいられる家づくりを目指した。
そしていま、家のみならず、縁もゆかりもなかったこの場所も大好きになったという。
「この家に住んでから、人生で初めて『この土地に根付きたい』って思ったんです。地元にいたときはそんなこと思ったことないですし、他にもいろんなところに住んできましたけど、そんな感情になったことは一度もなくて。自然が多い環境もそうだと思いますけど、なによりこの家が、そういう気分にさせてくれているんだと思います」
多くの時間を過ごす家。その場所を好きでいられたなら、人生はきっと、より豊かになっていく。
- Photo/Hiroyuki Takenouchi
- Text/Keisuke Kimura
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