- shimadaさん
- かつてヴィンテージ家具店に勤めていたほどのインテリア好きで、趣味はボードゲームやマンガ、アニメ鑑賞。理容師でヴィンテージ好きのご主人と2018年に築40年のマンションを購入し、リノベーション。アメリカンコッカースパニエルのフレッドとともに仲良く暮らしている。
- Instagram - @a___bemi
お気に入りの家具と過ごす空間。
「日本の住宅は耐震基準などの関係で独特の作りになっていたり、ひと目見るだけで日本だってわかったりしますよね。これから家を買ってヴィンテージ家具と一緒に暮らしたいと考えたとき、なるべくそう見えないようにしたいと思ったんです」
そう語るのは、2018年に世田谷のヴィンテージマンションを購入し、自分たちの装いに変えて暮らし始めたshimadaさん。そのご自宅は、玄関からリビング、ダイニングキッチン、そして寝室に至るまで、ドアのないひと続きになった珍しい間取り。この空間には、確かに“日本の家っぽさ”が感じられない。
「家具ありきで家を考えたとき、時代を経たマンションのほうが雰囲気が合うだろうと思い、築40年ほどのマンションをフルリノベーションしました。チーク材の家具に合わせるかたちで、腰壁やパネルなど深めの色に統一してもらいました」
リノベのテーマは「映画に出てくるようなごく普通の家」
家作りをするうえで、あらかじめどんな家にしたいかという構想はできていたshimadaさんだが、大変だったのはむしろリノベーションをお願いする業者選びだったそう。
「はじめは物件探しからリノベーションの設計、施工まで一貫して対応してもらえるのが一番良いかなと思っていたのですが、やりたい内容をスムーズに伝えることの難しさを感じました。壁やドアを無くして、天井もぶち抜くまでは良いとして、床のフローリングを剥がして躯体の状態にしたいと要望を伝えると、当り前ですがやめといたほうが良いよと止められるんです(笑)」
その後何社も工務店に当たって、ようやくshimadaさんの要望を理解してくれる設計事務所に遭遇。施工知識をもとに、雰囲気に合わせた提案をしてくれたのが決め手になったという。
キッチンの腰壁や、LDKと寝室の間に設けたガラスとウッドの間仕切り、玄関脇のクローゼットに続くウッドの扉もすべてリノベーション時の造作。家具作りに精通している設計事務所だけあり、shimadaさんも安心して任せることができたという。
「私たちが空間全体に求めたのは『映画に出てくるような、至って普通の外国の家庭』というシンプルなテーマ。自分達の中には明確にやりたいこと、やりたくないことがあって。その部分を擦り合わせる作業が特に難しいと感じていましたが、設計担当の方に伝えると、すんなり受け入れてくれて。『ハーフウォールペイントは欧米の刑務所や公共施設でも多く使われていて、傷や汚れが目立たないようにしている巾木のような意味もあるんですよ』など好みを理解した上で色々と教えてくれたのがうれしかったです」
“ニドベーション”で行き着いた理想形。
すっかり暮らしのスタイルが出来上がっているように見えるshimada邸だが、「住んでいるうちに好みが変わってきたり、飽きがくるのは仕方のないこと。なのでその都度変えていこうと思います」と、特に今のインテリアに固執をしているわけではないという。
現に入居時にフルリノベーションをしたあと、2年ほど住んでから二度目のリノベーションを行っている。
「夫の希望でフローリングを剥がし、ざらざらのコンクリートの床で土足の生活をしていたのですが、住んでみると掃除は大変だし何より冬が極寒で。部屋の仕切りも断熱効果もない約50㎡の空間なので、暖房が全然効きませんでした(笑)。だから言ったじゃんという感じですが夫自身も寒さに耐えきれなくなり、2回目のリノベーション。私たちはニドベーションと呼んでいるんですが、このときに床下に断熱材を入れて、現在のフローリングを敷いてもらいました」
気にしないことを気にした、開放的な我が家。
自分たちが満足して過ごすためには、ある程度の割り切りが必要。そう思っていながらも、shimadaさんが譲れないのは「のびのびと暮らせるゆとりのある空間」。各部屋の仕切りをなくすことで、都会の暮らしにもゆとりのある間取りを実現している。
「多くのお家って寝室をクローズドにしてプライベート空間を分けたりすると思うんですけど、うちはそれを気にせず。“気にしない”を気にするようにしています。うちの場合は寝室が南向きにあるため、寝室もオープンにすることで家全体に光が入ってきて、ぐっと開放的になるんです」
他方、洗面に続くドアは、アメリカ旅行した際に持ち帰ってきたスーパーのチラシを使って、チャーミングに目隠し。その先はご主人の希望を反映した洗面となっていて、クラシックな蛇口付きのシンクや、鏡付き収納棚でシンプルな佇まいに統一されている。白のサブウェイタイルはバスルームまで続き、清潔感も演出されている。
「もとはトイレとお風呂は別々の個室だったんですけど、ここも壁をなくしてその分広くしました。バスタブから洗面が丸見えではあるんですが、見ようによっては海外のユニットバス風。リノベーションの際はいかに空間を広く見せるかということにフォーカスしていました」
モノ好きだからこその取捨選択。
「部屋の見栄えを気にして炊飯器を置かずに土鍋にしたり、テレビの代わりにプロジェクターにしたりと、日頃からあまり物を増やさないよう心がけているつもりですが、反面夫はかなり収集癖がありますね……」
shimadaさんはそう苦笑するが、ヴィンテージの家具とともに並べることで、さまざまなモノがインテリアのアクセントになっている。
ダイニング脇のハイボードに収められた無数のブロンズ像や、壁一面の写真集、ラックを埋め尽くすほどの洋服。ところどころにご主人のコレクション熱がみて取れるものの、全体としてスッキリまとまっているshimada邸。
モノを増やさないという選択には苦労が伴うが、モノ好きな人だからこそ優れた取捨選択ができる、というのも真理なのだろう。
「家具を選ぶ際に心がけていることは、その佇まいに惹かれることを大前提としつつも、現実的に空間を有効活用できるかということ」
G-PLANのサイドテーブルに、天板が拡張できるA.H.McINTOSHのダイニングテーブル。スタッキングできるGalvanitasのチェアは6脚も。友達を自宅に招くことも多いことから、収納性と拡張性に優れた家具が自然と増えていったという。
もともと2LDKだった70㎡のヴィンテージマンションが、リノベーションによって占有面積以上に感じる広々とした空間に。さらにモノ好きならではのこだわりが、美しさと快適さを生み出し、居心地の良いshimada邸を形作っていく。
家に温もりと個性を与えているのは、時代を超えてやってきた家具だけでなく、それらを修理しながらでも大切に使い継ぐという姿勢。夫婦の想いが、ヴィンテージライフをより特別なものにしている。
- Photo/Mai Tanaka
- Text/Junpei Suzuki
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