藤本 夏樹&CHiNPAN|もしSunny Track House(サニートラックハウス)に住んだなら?
BEAMSのアウトドアプロジェクト「HAPPY OUTSIDE BEAMS」と「LIFE LABEL」が作る住まい、「Sunny Track House(サニートラックハウス)」。家にいながら外を感じられる空間を基盤にした住宅が完成した。最大の特徴は、LDKと“アウトサイドリビング”がひと続きになった2階。中と外、そして住む人の日常が溶け合う空間に、藤本夏樹さんとCHiNPANさんはどのような暮らしを思い描くだろうか。
- Sunny Track House
- 外遊びを楽しむための、拠点。 好きなヒト、モノ、コトをたくさん、この家に乗せて、昼も夜も、自宅にいながらも、全力で“外遊び”を楽しんでみては? 「Sunny Track House」の詳細は特設サイトにて。
- 詳しくはこちら
部屋と外のゆるやかな往来が、インスピレーションをもたらす。
1日のほとんどをアトリエ兼事務所で過ごすという夏樹さんとCHiNPANさん。およそ2年前、職業柄インスピレーションやフィーリングを大切にする2人が迷いなくこの場所を借りることに決めた理由は、ひとえに、自然との距離感。緑豊かな公園からほど近い立地にあり、また、緑々とした景色や気持ちのいい光が差し込む窓を通して、中と外が繋がるような開放感を感じられる。
童心や開放感が、ひととき“仕事”から解き放ってくれる。
夏樹さんの仕事部屋は、電子楽器や機材に囲まれたスタジオさながらの空間。現在はほぼすべての仕事道具をこの部屋に集約し、暮らしと仕事をすっぱり分けて制作に没頭しているが、もともとは、住まいと職場が一緒でもかまわないタイプだという。
「ただ、今は娘のKIKIちゃんが何でも触りたがる時期なので、家には簡単な電子ピアノひとつだけ。それを使って、自宅で弾き語りの練習もしています」
機材で埋め尽くされた仕事部屋だが、能率を重視するばかりではない夏樹さんの創作姿勢が、一角にあるディスプレイ棚からうかがい知れる。ヴィンテージのフィギュアやポータブルゲームは、自身が昔遊んだり集めたりしていたのを実家から持ってきたものがほとんど。なかには、大人になってから懐かしんで、改めて購入したものもあるとか。
「根詰めちゃう仕事なので、童心にかえれるものをそばに置くようにしていて。子どもの頃から好きなものや、大人になると忘れがちなものは、楽曲や制作物にも、どこかで影響しているかもしれません」
うっかり集中しすぎてしまうのは、なにも制作中にかぎった話ではない。楽曲のチェックをはじめ、散歩やランニング中など、ひとりの時間にはいつ何どきも音楽を聴いているという。
「アトリエでは、妻のいるリビングの方で聴くことも多いです。公園の緑が見える景観のいい窓から外を眺めつつ聴くだけでも、開放感があっていいんです。仕事部屋のすぐ隣にそうした場所があるから、いつも、心も体も適度に休まっています」と話す夏樹さん。
創作中も憩いの時も。自然は常に、手の届く距離に。
日当たりのいいリビングのテーブルで制作にいそしむCHiNPANさん。キャンバスではなく和紙に描くことが多いため、ちょっとしたスペースさえあればどこでも作業可能だが、作業台とするテーブルにはこだわりアリ。
「いつも使っているのはDIYした昇降式のテーブルです。既製の昇降式テーブルは、天板の素材が気に入らないものが多くて……。家具はできるだけ“本物”が使われたものを選びたいので、結局、木材と脚を別々に用意してオリジナルの昇降式テーブルを作っちゃいました」
テーブルの脇には、以前アメリカから友人が遊びに来たとき、「泊まれるように」と購入したという畳張りのデイベッド。これを選んだのもまた同様の理由だとか。
「本物の素材が使われたものは、それだけで惹かれてしまいます。このデイベッドも、井草の香りに癒される。夜は友人を招いてアトリエでお酒を飲んだりすることもありますが、そういうとき、ここがKIKIちゃんのちょうどいい居場所になっていたりもします」
アトリエは開放的でいかにも仕事がはかどりそうだが、iPadでラフ画を描くときやPC作業をおこなうときなどは、近所の公園で仕事をすることも多いという。
「特にラフ画を描くときは、調べ物をしたりしながらいろんなアイデアを結びつけていくので、そうした環境が最適。できることなら、完成まですべて外でやっちゃいたいくらい。
“わざわざ”感ゼロ。室内から段差なく繋がる「アウトサイドリビング」。
職住が一緒でもかまわないタイプだという2人だが、CHiNPANさんいわく、一番の理想は「家の中と外が分け隔てなく繋がった平屋」だとか。
「家族でよくお邪魔する友人宅がまさにそうで。庭にはみかんの木や池があって、そこをビオトープ状態にしていたり、その横で気張らずバーベキューをしたりと、憧れです。そういう意味では、Sunny Track Houseの2階のアウトサイドリビングは庭のように使えるから、理想の暮らしに近づけそう」
「子どもにとっても、すごくいい環境になりそうだよね」とは夏樹さん。というのも、KIKIちゃんは最近家庭菜園に目覚めて、野菜がすくすくと成長する様子を毎日心待ちにしているとか。
「このアウトサイドリビングで家庭菜園をやれば、収穫した野菜をそのままバーベキューコンロで焼いて食べられる。それも、日常の延長っていう感じで気軽にできそうなのがいいよね。『張り切って準備してテラスで食事』じゃなくて、『今日はちょっといい魚を買えたから、外で焼いて食べようか?』くらいが、一番贅沢じゃない?」
「外に出る“わざわざ”感がないのは本当にいいよね。夏は、プールを置いたりテントを張ったりしてもいいし、そういうのを出しっぱなしにしておけるのもいい。毎朝家族でやってるラジオ体操も、ここでできそう!」
CHiNPANさんにとって、LDKとアウトサイドリビングが段差なく繋がる設計は仕事環境としても理想。思い立った瞬間に公園へ出かけるように、LDKから一歩出れば、自然を感じられる屋外。それも、完全プライベート空間。
「ラフ画を描く段階から作品の完成まで、全部を外でできちゃいますね!外なのにプライベート空間でもあるから、仕事もよりはかどりそう。それに、デッキは本物の木材なので、画材で汚してしまっても気にならなそう。昇降式テーブルが汚れたらヤスリで削って元通りにしているように、メンテナンスしながら住み継げるのは魅力的です」
一方、「アウトサイドリビングで、きっとアコギとか弾いちゃうんだろうな」と、ミュージシャン魂をくすぐられる夏樹さん。「たとえば野外ライブをすると、音の響き方ひとつとっても屋内とはまるで違うんです。そのときの感覚を持ち帰って、今度はそこに合う音楽をやりたくなる。いつも、その繰り返しというか」
音楽をつくり、さまざまな場所で演奏し、受け取った体験から次の制作に繋げる。その積み重ねをことさら大切にしている夏樹さんは、「ドラムセットを置いたり、親しい友人たちを招いてライブをしたり」と、想像を膨らませる。
音楽も映画も。“いつもより、ちょっと豊か”を選びたくなる。
木の温もり、自然を感じられる色合い、抜けのいい視界。室内にいながら、常に外を感じられるLDK。「天井から壁、床まで、一貫して木材が使用されていて、自然を身近に感じられていいですね」
CHiNPANさんは、窓際にワークデスクを配置することで、描いた絵をいつでも自然光のもとで確認できるようにしたいと話す。
仕事で電子楽器を多用する夏樹さんは、Sunny Track HouseのLDKにはアナログ楽器やレコードプレイヤー、音質のいいスピーカーなどを設置したいという。「温もりが感じられる内装に、窓からの景観が相まって、音の聴こえ方も絶対に違うと思んです」。また、KIKIちゃんにもアナログなものに触れる機会を持ってほしいそうで。
「いろんなものに興味を持って、思いついたときに触ってほしいんです。レコードを自分で選ぶとか、針を落とすとか、そうした体験が日常的になるといいですよね。アナログ至上ってわけじゃないですが、家庭菜園やテントと同じく、選択肢を広げたくて」
夫婦水入らずのプライベート時間も大事にしている2人。部屋で映画を観るときは、プロジェクターを使って大きく照射すれば野外上映気分。また、朝はお気に入りのコーヒーを淹れて、アウトサイドリビングで朝日を浴びながら味わう。日常生活の隅々が豊かになりそうだと、2人は顔を見合わせた。
仕事も暮らしも選択肢が広がる。“特別”が日常の延長に。
野外を含むさまざまな場所での演奏体験とアトリエでの制作を行き来しながら、音楽と向き合ってきた夏樹さん。開放的な空間で描くことを好み、身近にある自然がもたらすインスピレーションを大切にしてきたCHiNPANさん。“場”の力を肌身で感じ、とりわけ外で触れるもの、感じることを尊びながら、創作の原動力を得てきた。
家の中と外が分け隔てなく溶け合うSunny Track Houseなら、そんな2人のルーティンは、もっと何気なく日常的なものに。そしてまた、アウトドアならではの楽しみや季節のうつろいを娘に存分に味わわせてあげたい2人の願いも、ごくごく日常的に叶えられそうだ。
- Photo/Hisanori Suzuki
- Illust&Design/Daiskech
- Text/Masahiro Kosaka(CORNELL)
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