- 井上直哉(TOMORROWLAND プレス)
- いのうえ・なおや|キャバン、スーパー エー マーケット、ランド オブ トゥモロー、エディション、メゾン エ ヴォヤージュのPRを担当。展示会、メディア設計、SNS運用、シーズンルックやイメージビジュアルの撮影など業務内容は多岐に渡る。
- instagram - @naoya_inoue_95
一歩踏み入れたらワクワクが止まらない、縦に伸びる吹き抜け立体空間。
「家の決め手は何よりもこのユニークで開放的な建物の空間全体です」と話す井上さん。
都心での賃貸暮らしから一転、結婚を経て30歳を目前に郊外にマイホームを購入したのは2023年11月ごろ。玄関から階段を上がると、下からダイニング、リビング、ベッドルーム、バスルームという5つのフロアが交互に現れる。
日当たりも風通しも良い伸びやかな空間は、コンクリート打ちっぱなしの壁で囲まれたソリッドなムード。そこに前の家から一緒に引越してきたという井上さん厳選のミッドセンチュリー家具が際立っている。
「初めてこの家に来た時、一番下にある玄関から最上階のバスルームフロアまで続く吹き抜けにワクワクしたのをよく覚えています。間取りは2LDKですが、壁の仕切りがないから大きな家具を置いても広々としていて、全く窮屈じゃないのがお気に入り。大きな窓からの光がリビングだけでなく、空間全体に差し込む感じもこの空間ならではですね」
無機質でクールな空間に散らした、差し色の遊び心。
30畳ほどのリビングで大きな存在感を放つのが、この引越しを機に新しく購入したという中古のカッシーナのソファ。これだけの主役級家具が空間にバランスよくフィットしているのは、これまで井上さんがコツコツ集めてきた名インテリアが脇を固めているから。
白と黒のタイル柄のようなラグ、鮮やかな黄色のUSMハラーのキャビネット、ポスターや小物の赤色……。コンクリート打ちっぱなしのグレーな空間の各所に、バランス良く散らばるビビッドなカラーがよく映えている。
「家具のデザインは基本的に直感で選ぶことがほとんど。ジャンルは幅広く見ているつもりですが、中でも色や素材などが個性豊かなミッドセンチュリーを選ぶことが多いですね。部屋のレイアウトを考える時は、ジャンルが違えど家具の素材を揃えると空間がまとまる気がしていて、我が家ではキャビネットやソファ、椅子など大きな家具の脚をメタルで統一しています」
「インテリアは、妥協せずに良いものを買うのが僕のセオリー。愛着が湧くものは居心地のいい部屋を作る上で欠かせません」と話す井上さんに、名作家具の入門としておすすめのものを聞いてみた。
「インテリアで意外と侮れないのがスツール。老舗ブランドでも手を出しやすい値段のものが多いし、小さいながら部屋のムードを変えてくれるアイテムだと思います。ちなみに我が家にあるカッシーナのスツールは、それなりに値段もするので買う前に妻に『それ本当に必要?』って言われましたが(笑)。でも、ソファの足置きになったりサイドテーブルとして飲み物や雑誌を置けたり意外と便利ですよ」
各部屋の役割にとらわれない、階段が繋ぐ自由な暮らし方
ダイニングテーブルセットの横にちょこんと佇むチェアや、バスルーム横の日当たりのいいスペースにあるハンガーラック。「どうしてそこに?」という家具も違和感なく馴染むのは、メゾネットという構造で壁の仕切りがなく、部屋ごとの役割が固定されず自由な空間になっているから。
「カーキ色のイームズのヴィンテージ2ndチェアは最近買った新入りの家具。すぐそばにコンセントがあるので、目の前にあるキッチンで料理をする妻を見ながら、ちょっとしたパソコン作業をすることも」
「この位置に置くと、上のフロアから下を覗いた時に、カーキの椅子がすみっこにフィットするんです。緑のチェックのラグとのバランスも良くて気に入っています」
ファッションと同じく、リサーチを制すものが部屋作りを制す。
新卒から現在の会社に入社し、長くファッション業界にいる井上さん。色や素材、バランスを考えるところはファッションと部屋作りで共通点も多いという。
「服が好きだと『あの年代のあのブランドのアイテムが欲しい』とか、気になるアイテムやブランドを掘り下げることが多いと思いますが、家具も全く同じ。家具を買うときは徹底的に事前にリサーチして、吟味してから買います」
井上さんのお気に入りの場所は、なにより座り心地が良くて購入したカッシーナのソファ。1人でソファを独り占めしてゆっくり過ごしたり、夫婦2人でプロジェクターで映画を壁に映して見たりすることも多いが、仕事仲間や友人が家に遊びに来ることも月に一回は必ずあるとか。
「お昼の13時くらいに集まってリビングでお酒を飲みながらゆっくり過ごして、窓から入る光が暗くなってきて日が暮れるのをなんとなく感じながら時間を忘れて23時ごろまでずっと家で過ごすことがほとんどですね」
井上さんが作る空間は、主役級の家具のかっこよさと遊び心のあるちょっとした抜け感のバランスが絶妙。フロアごとに暮らしを分け、またそれぞれの暮らしを隔離せずに繋げられる楽しさはメゾネットならでは。広々とした空間の余白が、井上さんのエッセンスでどのように埋められていくのか、今後の変化も楽しみだ。
- Photo/Takahiro Kikuchi
- Text/Ayako Nozawa(FIUME)
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