セレクトショップのディスプレイを参考に。アパレルスタッフの、部屋づくりのアイデア。
部屋づくりのアイデアやヒントは、ときに思いがけないひょんな場所に隠れていて、アパレル企業で働くsakiさんにとって、それは洋服を扱うセレクトショップだったりする。初めてのひとり暮らしを送るこの部屋は、店舗ディスプレイをふんだんに参考にしながらも、洗練しすぎず、ほどよい生活感が香る。その居心地の良いバランスの、秘密を探った。
- saki(アパレル販売、WEB販促)
- 新卒で大手アパレル企業へ入社。5年目になる2024年、担当ブランドを異動し、店頭販売とWEB販促を兼任することに。およそ3年前、それまで父親が事務所として借りていた部屋をゆずりうけ、初めてのひとり暮らしをすることに。日当たりの良さがお気に入り。今欲しいのは、フリッツ・ハンセンのアリンコチェア。
- Instagram - @3ki_____m
セレクトショップへ行くと、まずディスプレイが気になる。
「洋服でもインテリアでも、どうやったら可愛く見せられるかを考えているときが、一番楽しくて」
アパレル販売員としてセレクトショップに立ちながら、本部でSNSやブログなどのWEB販促も担当するsakiさん。仕事に活かすことができたら、とはじめたプライベートのインスタグラムアカウントでは、インテリアやライフスタイルを日々アップしていて、多くのフォロワーがいる。実際、そこで培った見せ方や撮り方を、仕事でも役立てることができている。
「必要に駆られてはじめたことですが、やってみると、意外と楽しくて。向いていたのかもしれません」
セレクトショップへ買い物に行くと、洋服はともかく、「このディスプレイ、可愛いな」と、むしろ空間づくりに目を奪われるようになったのも、その頃から。そうして得たヒントを、自分の部屋づくりに散りばめている。
また、「職場にも空間デザインが得意なスタッフがいたりして。日々、話を聞いたり、影響を受けたりしています」とも話すように、洋服の提案のみならず、インテリアや空間づくりもひっくるめて大切にする。セレクトショップに身をおく今を存分に楽しみながら、仕事とプライベートを上手に混じらせ、感性を磨いているようだ。
生活感や物の多さを整え切らない。
リビングに置かれたJOURNAL STANDARD Furnitureのキャビネットは、とりわけsakiさんのお気に入りのスポットで、まさにショップのディスプレイを参考にした工夫が散りばめられている。
たとえば父親から譲ってもらったというビートルズのCDは、ある店舗でレコードが螺旋状に積み上げられていたのを参考にしたとか。アクセサリーなどの空箱も、いくつかまとめて積んでおけば、オシャレなディスプレイ風に。
見渡すと物は多いが、そのわりに散らばって見えないのは、とりもなおさず“ディスプレイのように見せる”から。蚤の市で手に入れたという古紙を、あえて額装せずクリップで留めて吊るしてあるのもしかり。ほかにも、ならではのアイデアを次々に教えてくれるsakiさん。
ちなみに古紙や古いアートブックなどは好きでつい集めてしまうというsakiさん。季節や気分によって、そうして集めたものをコラージュして部屋に飾ったり、オリジナルのインテリアを作ったりもしている。
「同じテイストのものを同じ場所にまとめるようにもしています。たとえば、飲んで美味しかったビジュアルもいいワインボトルは、棚の一角にずらっと並べておく。大好きな香水は洋服棚の近くにまとめておく、とか。あと、アートブックの上に雑貨を置いたりすると、なんとなく綺麗にまとまって見えるような気がします」
ショップのディスプレイのアイデアをそこかしこに取り入れることで、生活感や物の多さを整えながら、とはいえ、不思議と居心地もいい。その絶妙なさじ加減はというと、果たして細かな雑貨選びにも秘密があるようで。
「このゴブレットはとくにお気に入りなんです。La Soufflerieというフランスのブランドで、ひとつずつ大きさや形が微妙に違う。そういう、作り込まれていないクラフト感が大好きで。」Aya Courvoisierの器も、同じ理由で気に入っていて、でも気に入りすぎて、普段の食卓にはなかなか出せないんです(笑)」
また、リビングでひときわの存在感を放つNOCEのコーヒーテーブルも。オンラインで購入したものだが、本物の切り株が使われていて、それゆえイビツで整わない。どんなデザインが届くかわからないのも楽しみのひとつだ。
「単体で可愛いものが好き。でも、いわゆる作家モノは存在感が強すぎて部屋のなかでは浮いてしまいがちなので、個性が強すぎないこのくらいがちょうどいいんです」
強すぎないクラフト感や、やわらかなアジをたっとび、それらをさらっと、イケアの家具と合わせたりもする。だから、ショップのディスプレイを参考にしながらも、肩肘張らない生活空間に着地するのだろう。
コーディネートが捗る、収納のコツ。
職業柄、もちろん洋服も多く、備え付けの収納の多さがこの部屋の気に入っているポイントのひとつだというが、それでも収まり切らない洋服は、壁一面に配置した無印良品のスタッキングシェルフに畳んで入れる。
「見せる収納にしたいと思っていました。実家の収納は引き出しタイプのタンスだったのですが、奥にしまってある目につかない洋服は、どんどん着なくなってしまい……。こうして見えやすくしておくだけで、コーディネートも自然と決めやすくなりました」
パンツやカットソー、ニットなどは畳んで収納。一方、クロゼットにはシワが気になるシャツや丈の長いワンピースを掛け、また別のハンガーラックには重量系アウターをまとめる。
カテゴリーごとに分けることで、なにがどこにあるかが一目瞭然。デニムやボーダー柄のアイテムなど、偏愛アイテムが多いsakiさんにとってはなおのこと、細かい違いが識別しやすいと、手持ちの洋服をまんべんなく選び取るうえで役立つのだろう。
「少し前までは冬物を取り出しやすい位置に収納していましたが、暖かくなってきたので、先日配置を入れ替えました。そうやって、常に使いやすい収納にしています!」
これからも、仕事とプライベートを相互作用させて。
「これからも、仕事で活かせそうなことがあれば、部屋づくりやインスタグラムで試していきたいです」
仕事で得た気づきや感性を暮らしや部屋づくりに活かし、仕事に活かせそうなアイデアをプライベートで試してみる。その相互作用の無限ループが、きっとこれからも、彼女の部屋づくりを支えていく。
- Photo/Sana Kondo
- Text/Masahiro Kosaka(CORNELL)
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