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ゴチャ混ぜをバランス良く。住まいは自由自在に操れる、自分だけの玩具箱。
GREEN LIFE 2024.03.11

ゴチャ混ぜをバランス良く。住まいは自由自在に操れる、自分だけの玩具箱。

ちーさんの住まいは、なんとも形容しがたい。形容しがたいほどに唯一無二のインテリアだからこそ、人の目を引く。しかし、玩具箱のごとく独特の世界観をつくり上げているのは、単に感覚だけにあらず。そのノウハウの一端を知れば、きっと真似したくなる、唯一無二の住まいをつくり上げる秘訣を探りに伺った。

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ちーさん
ちーさん
住まいは築40年を数える一軒家の二世帯住宅。観葉植物を購入したのをきっかけにインテリアに開眼し、大学で学んだ建築学の知識を生かしながら唯一無二の部屋づくりに邁進。植物を中心に、あらゆるモノに満たされた部屋の様子をInstagramから発信している。

ゴチャ混ぜのアンバランスを、バランス良く見せる醍醐味。

ちーさんの自宅は2階建ての二世帯住宅。1階には義母が暮らし、2階にちーさん一家のリビングと寝室を構える一方、1日の締めくくりである夕食には家族全員が1階の食卓に集う。

しかし、いかにもアットホームな家族の光景とは裏腹に、二世帯住宅の2階をキャンバスにちーさんがつくり上げた部屋の世界観は、あまりにも独特。その様子はエキゾチックな香りに包まれた古着屋のようでもあり、年代も国籍も縦横無尽のアイテムが集う古物店のようでもあり、珍しい品種を取り揃えたグリーンショップのようでもある。

「確かに、形容しづらいインテリアですよね。でも、僕にとってはそれが正解です。せっかく部屋づくりをするなら、人と違ったほうがおもしろい。アンティーク調にも映れば、多国籍のようにもミッドセンチュリーのようにも映る。そうしたゴチャ混ぜのアンバランスを、いかにバランス良く見せるかそれが部屋づくりの楽しさです

ちーさんが部屋づくりに開眼したのは、今から2年ほど前のこと。壁一面を埋め尽くすような額縁の数々も、シルエットや色柄も多種多様な花瓶も、部屋にあるモノの多くが2年以内に収集したというから驚かされる。

「最初のきっかけは観葉植物でした。それまで夢中になっていた趣味が一段落して、また新しく没頭できる何かを見つけたい。新たな趣味探しの気持ちで植物を購入したところ、ハマりましたね。植物はインテリアの一面を持っている一方、自分の部屋に合うかどうかは育ててみないとわからない。その不確実性がおもしろくて」

大ぶりな植物のシルエットが映える“抑揚”ある配置。

聞けば、ちーさんが最初に手に入れた植物は、繊細な葉っぱがふんわりと折り重なるようなアスパラガス・ナナスと、まん丸とした葉っぱが密集しては垂れ下がるように伸びていくピレア・グラウカ・グレイシーの2種類。

「ホームセンターでふと目に留まったのが、その2種類でした。当時は部屋にモノも少なく、リンゴ箱の上にちょっとした鏡とアクセサリーをディスプレイしていたくらい。でも、そこに植物を仲間入りさせてみたところ、部屋の印象が変わったんです。これはおもしろいぞ、と品種を増やしていった結果、今では100種類以上の植物を育てています」

植物収集を始めた当初は、枯らしてしまうこともあったとか。今現在、ちーさんの部屋に大ぶりな植物が多い理由も、枯らさないため。大きな品種であるほどに生命力が強く、枯れにくく、同時にインパクトも兼ね備えている。

「インパクトの強い植物を単調に並べるだけでは、もったいないですよね。大きな品種を選びがちなだけに、横一線にならないように気をつけながらディスプレイしています。ツルが低く垂れ下がるように吊したり、高い位置から葉っぱが横に伸びるように飾ったり。それぞれの配置に抑揚をつけると、かえってバランス良く見えるんです

きっと真似したくなる、建築学に裏打ちされたセオリー。

ちーさんの部屋は、雑多さが絵になる。その理由はずばり、部屋づくりのセオリーを心得ているから。100種類以上もの植物の個性を際立たせ、なおかつ、バランス良く見せるためのノウハウも、そのセオリーに基づいている。

「大学で建築学を専攻していたんです。卒業後は設計のゼネコンに就職して、転職した今も建築に関わる仕事に就いています。部屋づくりと仕事は無関係。あくまでも趣味ですが、無意識のうちに建築のセオリーは意識してしまいますね。そんなことを言ったら、第一線で活躍されている建築家の方に怒られてしまいそうですが(笑)」

そんなセオリーが息づいているのは、部屋の主役のごとく目を引く、壁一面の額縁も然り。素人目にはランダムに飾られているように見える並びも、実は計算尽く。ふたつ以上の額縁の辺と辺が水平、もしくは垂直に並ぶようにディスプレイ。この“水平・垂直ライン”を徹底しながらパズルのように隙を埋めていくと、収まり良く見えるという。

「ほかにも意識しているのが、建築の“受けと抜け”の考え方です。例えば、部屋の入り口から見える場所に面の広い棚を置き、視線の受け手をつくる。すると、人は同じ部屋にいてもシーンが切り替わるような感覚になり、視線が別の方向に抜けていきます。この考えを当てはめると、モノが多くとも渋滞した印象になりづらいんです」

ちーさんの部屋は、単なるゴチャ混ぜにあらず。建築学に裏打ちされたセオリーが随所に隠されているからこそ、あらゆるモノに囲まれた雑多さが収まり良く、バランス良く見え、部屋そのものがアートのように映る。

住まいは自分と家族の所有物、だから自由に楽しめる。

「住まいは家族と自分の所有物。部屋にあるモノを壊してしまっても、悲しむのは自分。他人に迷惑をかけず、自由にいじれることが部屋づくりの醍醐味ですよね。それに理想の部屋に近づけるべく、あらゆるモノを探して手に入れるのも楽しい。自分の部屋に合わなかったとしても、誰かしらに譲れば、そのモノも無駄にはなりません」

植物をきっかけに部屋づくりに魅了されたちーさんが、去年、一年間に訪れたリサイクルショップは約100軒。休日のたびに家族を連れ立ち、都内よりもモノの価格が抑えられた、山梨県のショップに出向くことが多いとか。

「リサイクルショップ巡りの甲斐あって、リビングはほぼ完成形。寝室のインテリアに着手し始めたところですが、主役は大量のぬいぐるみ。買い物に付き合ってもらうご褒美として、娘にぬいぐるみを買うようにしているんです」

壁面収納にぎゅっと凝縮され、その一つひとつが今にも飛び出してきそうなぬいぐるみのビジュアルだけでも心が躍るほど。しかし、これはあくまでも現在進行形。聞けば、寝室のテーマは韓国風とアメリカン・昭和レトロの融合。

「人とは違ったインテリアに仕上げたい欲求がある反面、食わず嫌いはしたくないんです。今、流行りの韓国風に、異国のポップさを混ぜ合わせたら、どうなるか?好奇心のままに化学反応を楽しみつつ、最終的には誰とも被らない寝室をつくっていきたい。その試みのひとつとして、先日、壁にネオン管を設置したところです」

エキゾチックな古着屋のようにも、多国籍な古物店のようにも、珍しい品種を取り揃えたグリーンショップのようにも映るリビングを完成させたちーさん。寝室もまた、形容しがたくも目を引く部屋になるに違いなく、唯一無二の世界観を感じさせるリビングと同様に、ちーさんは部屋という空間を自由に遊び倒すのだろう。

  • Photo/Hiroyuki Takenouchi
  • Text/Kyoko Oya
LL MAGAZINE