住まいのあちこちに"段々"を。ステップと色使いでメリハリが生まれる家。
hataさん夫妻は自宅のことを「小さな土地の、小さな家」と表現する。しかし、その小さな家に開放感もユニークさもぎゅっと凝縮され、不思議な心地よさをかもし出している。では、心地よさの理由はどこにあるのか。その秘密を探りにお邪魔した。
- hataさん
- 妻と娘、エキゾチックショートヘアの“ノン”と“タン”との3人+2匹暮らし。2018年に祖父母から受け継いだ土地にマイホームを建て、住まいの様子をInstagramにアップ。インテリア雑誌にもたびたび取り上げられている。
- Instagram - @hhhaaatttaaa0205
中庭から始まる、小さな家の開放感ある暮らし。
hataさん一家が暮らすのは、東京都下の住宅街。hataさんの祖父母もこの場所に暮らし、受け継いだ土地に建てた住まいは延床面積80㎡ほど。夫妻は「小さな土地の、小さな家ですが」と口を揃えるも、hataさん一家のユニークな住まいはメディアにも注目され、雑誌に取り上げられることもしばしば。Instagramに投稿される部屋の写真にもファンが多い。
「祖父母が建てた前の家も、小さいながら庭付きでした。でも、その庭を持て余していましたね。道路に面して庭があったので、ご近所さんから丸見え。子供を遊ばせようにも車が来たら危ないし、せっかくの庭が宝の持ち腐れ。それもあって、中庭のある家にしたかったんです。周囲の視線を気にせず、子供も安全に遊べる中庭のある家に」
hataさん夫妻が思い描いた“中庭のある家”を実現に導いたのは、建築家の堀内雪さん。建築をテーマとしたテレビ番組で堀内さんの自宅兼設計事務所を見るや、ひと目惚れ。夫妻は堀内さんの事務所に設計を依頼した。
最大の望みである中庭をつくるべく、住まいはコの字型の間取り。コの字型によって生まれるスペースに庭を配していることから、おのずと居住空間であるLDKと庭が隣接し、お互いを仕切るのは天井いっぱいにまで延びたガラス窓。外構にはホワイトに塗装されたルーバーが設けられ、中庭の開放感を生かしながらも周囲の視線をしっかりと遮る。
インドア好きの家族だからこそ、“外”を感じたい。
hataさん夫妻にとって念願の中庭には、テーブルとチェアをセット。ふと気が向いたときには、中庭のテーブルで朝食をとることもあるという。そして、家を建てた当時は幼稚園生だった娘さんも、今は小学4年生。地域のミニバスケットボールチームに所属し、学校が休みの日は練習三昧。自宅の中庭にもバスケットボールが顔を出す。
「中庭を一番活用しているのは、娘かもしれません。僕たち夫婦はたまに朝食を食べたり、コーヒーを飲んだりするくらい。友人を招いて一緒に食事をするときも、特に庭でバーベキューをするわけでもなく、基本的には家の中。でも、中庭は絶対。アウトドアよりインドアが好きな僕たちだからこそ、この開放感が大事というか。例えば、忙しい朝にキッチンに立つと、当たり前のように中庭が目に入ります。それだけで、ちょっとリフレッシュできるんです」
アウトドアリビングさながらに、LDKからシームレスにつながる中庭。そう聞くと、キャンプをはじめとした外遊び好きの家族像を思い浮かべるはず。しかし、ミニバスに精を出す娘さんもご多分に漏れず、hataさん一家はインドア派。外に出掛けるよりも自宅で過ごす時間を大事にするからこそ、家にいながら“外”を感じられる中庭が欠かせない。
「2階に娘のための個室を設けてはいるものの、基本的には家族3人、1階で過ごすことが多いんです。不思議とそれぞれの定位置も決まっていて、娘はリビングのソファ、妻はキッチン、僕はダイニングテーブル。各々が自分の好きな場所で、好きなことをしつつも、どこからでも中庭が見える。何はなくとも気持ちよくて、ついつい家の写真を撮りたくなってしまって(笑)。何気なく写真を撮り出したことが、Instagramを始めたきっかけです」
住まいにある“段々”は、愛猫たちのキャットウォーク。
何はなくとも気持ちのいい、暮らしに溶け込むような心地よさ。その理由は中庭の存在だけでなく、家の構造にもある。住まいの至るところに窓が設置され、さらには娘さんの個室とトイレ以外に扉はない。すると、窓からの採光による明るさはもちろん、LDKの窓から注ぐ風が住まい全体を巡り、おのずと心地いい空気に満たされていく。
そうした工夫のみならず、hataさん一家の住まいはユニークな構造。「わが家の小さな土地を、最大限に生かした結果なのかも?」と話してくれたが、リビングとダイニングの境には人が腰掛けるのにちょうどいいくらい、ちょっと深めの段差が設けられ、1階と2階をつなぐ階段は、途中でL字に曲がったかね折れタイプ。階段の踊り場奥にクローゼットが確保され、夫妻の寝室には小さなロフト、娘さんの部屋には屋根裏部屋のごとくスペースも備えられている。
「リビングに段差をつけたり、寝室にちょっとしたロフトを設けていたり。平たく表現するなら、わが家は段々のある家。リビングに段差をつけたのは天井高を上げるため、ロフトを設けたのは収納スペースを増やすためですが、こうした段々によって、住まいにリズムが生じますよね。おかげで、暮らしにもメリハリが生まれた気がします」
住まいの段々が生み出すリズムとメリハリを謳歌しているのは、家族の愛猫である“ノン”と“タン”も一緒。兄弟である2匹は、hataさん一家が新たな住まいを構えた2年後に家族の一員になったそう。住まいの随所にある段々は、さながらキャットウォーク。さらには採光性も抜群なことから、どこでも日向ぼっこができる。
フラットじゃなくていい。“不揃い”こその心地よさ。
住まいの構造がユニークなら、住まいを彩るインテリアもユニーク。ダイニングテーブルにコーディネートされた複数のチェアはデザインも色も異なり、ソファに並んだクッションもそれぞれが色彩豊か。さらにはラックの上だったり、壁に設けられたニッチだったり、部屋のそこかしこに顔を出す雑貨はどれもが妙に愛嬌のある表情をしている。
「僕も妻もインドア派なので、外に出掛けるとなったら、その目的は基本的に買い物。特に家具屋さんや雑貨屋さんを訪れることが多くて、ついつい買ってしまうんです。しかも、欲しいと思うアイテムに統一性がない(笑)。正直、テイストが統一された、かっこいいインテリアにも憧れます。それでもやっぱり、第一には好きなモノに囲まれていたい。その結果、わが家のインテリアは不揃いですが、この異素材ミックスの感じも悪くないかなって」
hataさん夫妻は「ぴっちり揃っていないほうが、肩肘張らずに暮らせる気がして」とも話してくれたが、この“不揃い”の感覚は、段々のある住まいの構造にどこか似ている。フラットではない、段々のある住まいが暮らしにメリハリをプラスするように、色彩も表情も規則性なく選ばれたインテリアは、その一つひとつが部屋のアクセントになる。
そして、インドア好きのhataさん夫妻の趣味のひとつがDIY。最後に今後のDIYの構想について尋ねると、答えは「娘の部屋を、娘好みのミントグリーンの色合いにアレンジすること」だそう。このミントグリーンという色もまた、個性的。すると、hataさん一家の住まいにまたひとつ新たなメリハリが生まれ、より家族に寄り添う家になる。
- Photo/Takahiro Kikuchi
- Text/Kyoko Oya
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