- 車田 篤さん(THE GREATBURGER オーナー)
- くるまた・あつし|原宿にあるハンバーガー屋「THE GREAT BURGER」を核に、「GOOD TOWN BAKEHOUSE」「JENNIFER SEVEN」「The Little BAKERY Tokyo」「LUCKY ALEXANDER CHINA」など人気飲食店たちを営む敏腕オーナー。
- Instagram - @atsushi_kurumata
仕事場との好アクセスな場所で築いたアメリカンクラシックな家。
車田さんがマイホームを建てる場所として選んだのは、自身のお店からもアクセスの良い都内の住宅街だった。「海や山に近いエリアに家を建てることも考えたのですが、今はお店や事務所に通う生活をしているので、もう少し自由な時間がないと難しい。だから、車ですぐ仕事場に行けるこの場所を選びました」
そんな職場からも近い場所に建てたのは、3階建ての一軒家。「まずこだわったのは、そんなに大きくない土地でも空間を広くとるため、縦に長く作った点です。1階は玄関と倉庫、浴室。2階はメインとなるLDK、3階が寝室、その上に屋上という作りとなっています。この辺りで庭を作るとなると、すごくコストがかかってしまうので、屋上はその代わりのような感覚ですね」
仲間や愛犬と楽しい時間を過ごす、こだわりのリビング。
部屋の中は、どこを見てもミッドセンチュリーの家具やヴィンテージ雑貨で溢れており、車田さんの経営するアメリカンな飲食店たちともやはり共通する世界観が漂っている。
「50年代から80年代ぐらいまでのものがベースとなっています。僕が小学生の低学年ぐらいの時に、初めて親に連れて行ってもらった映画が『E.T.』だったんです。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などもリアルタイムで観て育っていて、そこに思い切り影響を受けていますね。当時はアメリカがすごく輝いていて、小さい頃の憧れがそのまま仕事やこういう空間作りにも活きているんだと思います」
これまで仕事のオンとオフの境目があまりない生活をしていたという車田さん。だが、今はこの家に帰ってきたら、基本的にオフの時間にするようにしているという。「リビングで愛犬とくつろいだり、Netflixを観たり、屋上でサウナに入るなどしてリラックスしています。あとは、友人を招いてホームパーティをすることが多いですね」
屋上へ上がるとサウナと暖炉、そして遠くまで抜けた見晴らしのいい景観が出迎えてくれる。「友達を呼んでBBQはもちろん、すごく日当たりもいいので、公園に行くような感じで、ただ日向ぼっこをしてのんびりすることも多いです」
「僕は飲食店をやっているので、自分の店にも友人たちを呼んで集まれたりするんですけど、あくまで店じゃないですか。もし家を作るなら、プライベートな空間でありながらも、ある程度の人数が集まっても問題のない場所にしたいと思ったんです。普通に暮らすには、ちょっとオーバースペックなんですけど(笑)」
ホームパーティを存分に楽しむためのキッチンとダイニング。
キッチンとダイニングスペースは、6人座れるカウンターも圧巻だが、その後ろに4人掛けのボックス席があることも驚いた。
「ちょっとしたデッドスペースができるからボックス席を作ったり、人がたくさん集まることを考えて、ゼロから自分でレイアウトからデザインまでやりました。自分が料理をすることもあれば、シェフの友人に来てもらって、一夜限りのシークレットレストランを開催したりして楽しんでいます」
キッチン機器のほとんどに業務用のものを使っている点は、さすがは飲食店のオーナーといったところ。「冷蔵庫などは木材を張ったりして隠すことで、インテリアと調和させています。あと、床が無垢のフローリングとかだと油染みができてしまったりするので、タイルにしていますね」
「エアコンはもう完全にビルトイン(建築段階からあらかじめ組み込まれていること)にしたり、できる限り生活感などを見せないようにしています。家具を置くという感覚よりは、基本的には造作で机や棚などを作ってしまうというか。店作りの延長上で、いろいろなことを家の中に落とし込んでいったような感じです。あと、これも店を作る際と同じですが、照明によって空間の雰囲気が全然変わるので、そこは一番最後まであらゆるパターンを検証しました」。照明の多さだけでなく、どれも調光できるようにしている点もポイントだ。
細部にまでこだわりが詰まったホテルライクなバスルーム
お次はバスルームへ。海外のホテルをイメージしたというそれは、ただリッチな雰囲気というだけでない、車田さんらしいインスピレーションがあった。「シャワーや水栓などは、よくアメリカで行くホテルなどで使われているWater WorksというメーカーのものをL.A.から輸入して取り付けました。僕は衣食住全部が好きなんですけど、今後ビジネスとして宿泊にも興味があって。アメリカやヨーロッパなどのさまざまなホテルに泊まりに行く中で『これいいな、あれいいな』などといつもチェックしているんです」
「リビングなどはこだわっても、お風呂って普通というか限られた選択肢の中で作りがちじゃないですか。でも、せっかくだから隅々まで完全に非日常にしたいと思ったんです。お店もそうなのですが、“非日常を日常にする”というテーマというか、そういう気持ちが常にあるんです」
日々のモチベーションとなる、非日常な空間での暮らし
日も暮れてきたところで、再度屋上へ上がると、暖炉の薪に火をつけてくれた。「地方から友達が宿として泊まりに来るときなどがあって、よくこうやって飲んだりします。どうしても飲食店は閉まってしまうけれど、ここならお風呂に入ったあと眠くなるまで、ずっとリラックスしておしゃべりしたりできるのが良いんですよね」
「次は山梨とか少し離れた場所に2拠点で家を持ちたいです。どうしても都内だと縦積みの空間になってしまうので、リビングと庭が繋がっているような平屋に住みたいですね。いつになるか全然分からないですけど(笑)」。と、最後にそう遠くない未来の理想の暮らしについても話してくれた。
魅力的な空間を作る才能に長けた車田さんだから、きっとその家もオリジナリティあふれた素敵な場所になるに違いない。
- Photo/Takahiro Kikuchi
- Text/Sota Nagashima
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