屋根裏をアトリエに。創作に刺激を与えるアメリカンな部屋。
RYU AMBE(ファインアーティスト)
ファインアーティストのRYU AMBEさんが地元・茅ヶ崎で暮らすのは、広々とした部屋と屋根裏への吹き抜けが開放的な家。サーフィンやサイクリングなどの趣味ともマッチしたアメリカナイズされた空間で、AMBEさんの家づくりにおけるポイントを探りました。
- RYU AMBEさん(ファインアーティスト)
- ポップ・キュート・シニカルをキーワードとした表現を続けるアーティスト。数々のアパレルブランドや音楽フェスとコラボレーションアイテムなどを展開する。地元・茅ヶ崎でのストリートアートが話題となり、雄三通りやサザン通りなど街中の至る所に彼のウォールアートが描かれている。
- Instagram - @ryuambe
AMBEさんのアートを形成する、茅ヶ崎の人と街の自由さ。
茅ヶ崎駅と海を繋ぐ商店街・雄三通りを、ポップなウォールアートが彩っている。これらのアートはこの地で生まれ育ち、現在も茅ヶ崎を拠点に活動を続けるRYU AMBEさんの描いたものだ。
「アーティストとして活動を始めた頃、当時通っていたジュース屋さんの壁に絵を描いたのがストリートアートのきっかけ。そのウォールアートの評判が良くて口コミで他のお店とも繋がり、商店街公認で“安心・安全”をテーマにいろいろな壁に絵を描かせてもらったんです。今では地域密着型のスーパーや魚屋、ラーメン屋など、茅ヶ崎のさまざまな場所に僕のウォールアートがあります」
東京から電車で約1時間。AMBEさんが都心から少し離れた茅ヶ崎で活動を続ける理由は、街と人のスロウな空気感にあるという。
「茅ヶ崎の人って時間の過ごし方がすごくスロウなんです。遊ぶ約束をしても事前に予定を立てるのではなく、『とりあえず海を散歩しようか』と話しながら行動を決めます。そんな風に自然に身を任せるマイペースな感じが、僕はお気に入り。この街での気ままな時間の使い方が、僕の創作意欲にも繋がっている気がします」
東京と比べて電車やバスの本数が少なく移動手段が限られるなど、郊外ならではの不便を感じるときはないのだろうか?
「東京には電車やバス、タクシーなど移動手段はたくさんあると思うんですけど、僕は茅ヶ崎での自転車移動が好きなんです。移動手段も遊びの感覚なんですよね。自転車に乗ると風が気持ちよかったり、海が見える。何事も、“心が踊るかどうか”で判断したいと思っています」
雄山通りを越えて海に向かって歩いて行くと見えてくるのが、2022年8月にオープンしたAMBEさんのギャラリー。真っ白な壁に描かれた太陽のイラストと水色の壁が目印だ。「実は元々この物件は僕がよく通っていた古着屋だったんです。古着屋が移転するタイミングでオーナーがこのスペースを譲ってくれました。そういう縁が繋がったり、人や街の距離が近いのは茅ヶ崎ならではだと思います」
アートスタイルにも影響を与える、アメリカンな家。
AMBEさんがひとり人暮らしを始めた頃に出会った、この物件。温かみのある木造の床や窓枠、水色の壁などどこかアメリカンスタイルな内装が気に入って即決した。
棚や窓辺などにはAMBEさんが集めたアメリカントイやフィギュアが。趣味のピストバイクやスケートボードも、部屋に飾られたAMBEさんの作品と馴染んで一体化している。
「幼少期から『トムとジェリー』や『カートゥーンネットワーク』など、アメリカのカルチャーが好きでした。当時おもちゃやフィギュアをあまり買えなかった反動で、今は見つけるとつい買って集めてしまいますね。僕のアートもそうした文化に影響を受けているから、湘南のサーフィンやスケートボードなどの文化にもマッチするのかもしれません。街でアートを見た人が、どこかに茅ヶ崎とアメリカの繋がりを感じてくれたら嬉しいです」
「とにかく家にある物はアメリカナイズにしたい」というAMBEさんは、リサイクルショップで手に入れた木箱や空き瓶に自分のイラストを描き、統一感を持たせているという。海で拾った貝殻や石も、部屋を彩るアイテムに様変わりしている。「段ボールや空き瓶も絵を描くだけで愛着が湧きますし、大切にしようという気持ちになります。どんな素材でもアートになると思うので、『これもキャンバスに化けるかも』とゴミをとっておくことも多いですね」
創作意欲を刺激する、屋根裏のアトリエ。
「自分は制作と生活に区切りをつけず、一体化しているタイプ。この家は1階のリビングと屋根裏に続くスペースが吹き抜けで繋がっているので、アトリエと行ったり来たりしながら創作できるのがとても気に入っています。朝起きてコーヒーを淹れて屋根裏で絵を描いたり、海へ行って心を落ち着かせたり。毎日を自由に過ごす延長で、アートへの想像を膨らませています」
アトリエとして利用している屋根裏は、そこだけで30㎡近い広々とした空間。ここには作業で使うデスクやキャンバス立てだけでなく、AMBEさんの過去作品やアイデアノートなども置かれている。
「基本的に作業は屋根裏で行っています。大きな作業スペースを確保することが、家探しを決めたときの夢。テーブルの上ではパソコンを開いてグラフィックデータを作成、大きい絵を描きたいときはキャンバスを広げるなど、どんな作品でも窮屈なく制作できるこの広さは自分にピッタリです」
制作物に合わせて模様替えをして気分転換ができるのもお気に入りポイント。「今は屋根の形にデスクスペースをフィットさせていて、PC作業に集中しやすいようにしています。広いながらどこかプライベート空間っぽさもあり、窓を開けて海風を感じながら作業ができるのがいいですね」
都心から離れて、自分らしい暮らし方を。
「圧迫感を感じていたり、窮屈な気持ちだとうまく絵が描けないんですよね。物件を探していたときから、作業をしたり作品を飾るアトリエスペースを確保したいと思っていました。今の家はストレスなく自分の思いにふけることもできますし、リラックスして活動に取り組めています」
都心から少し離れた場所で、自分のスタイルにあった暮らし方を。窮屈さを感じないのびのびとした茅ヶ崎の街と家は、AMBEさんの自由なアートスタイルに繋がっている。
- Photo/Hisanori Suzuki
- Text/Uno Kawabata(FIUME)
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