- 今関 龍介(soerteディレクター)
- いまぜき・りゅうすけ|InstagramやYouTubeなどのSNSを通して、自身のコーディネートやライフスタイルを発信。ファッションブランド「soerte」のプロデュースや、ヴィンテージショップ買付、空間プロデュースなど幅広く活動する。
- Instagram - @ryusuke_imazeki
年代や系統が異なるアイテムも、色や素材を絞って統一感を。
ファッションもインテリアも、興味を惹かれるのはそのバッググラウンド。ファッションブランド「soerte」をプロデュースする今関龍介さんの家には、職人たちが古くから手作業で作ってきたヴィンテージの家具や雑貨があふれている。レコードやアートブック、民藝品など、アイテムのジャンルはさまざまだが、不思議と雑多な印象はなく、部屋全体が統一されている印象だ。
「目指したのは、木の温もりが感じられつつも、アートギャラリーのように洗練された空間。ウッド調のヴィンテージアイテムに、都会的なシルバーのスツールやテーブルを織り交ぜて、空間の雰囲気を引き締めています。前に住んでいた家ではカラフルな小物やアートが多かったのですが、手放してなるべく部屋の色味を軽減。ワンルームを区切ることで、プライベートは保ちつつ広々と空間を支えています」
前の家で使用していたガラステーブルやローシェルフは引き続き愛用。小物やアートの色味を工夫すれば、同じ家具でも簡単に、そのときどきの気分に合わせた風合いの空間が演出できる。
人の手で作られたモノを、背景と共に受け継ぐ。
ヴィンテージショップの店員との会話や画像検索などで、家具のバックグラウンドを知るのが好きだという今関さん。大量生産され消費されていくモノよりも、作家の手でつくられ、後世にも引き継がれるようなアイテムにより魅力を感じる。その分、出会いは一期一会だと思い、直感で買い物をすることが多いそうだ。
棚に並ぶのは民藝品の壺や花器、世界各国で集めた民族風のお面、石像など。「アート作品は空間にエッセンスを与えてくれるため、なるべく見つけて保有したい」と今関さんは話す。
2年前に初めて手に入れたアートピースだというディーター・ラムスがデザインした「BRAUN SK5」は、かねてから憧れていた逸品だ。デザイナーズチェアやランプも好きでついつい集めてしまうそう。
服も家具もブランドや作者にこだわることはなく、作者不明のアイテムも多い。
「アノニマスなアイテムも、デザイナーズ家具も『長く使える、手作りのモノ』という自分の買い物の基準にそって集めていますね。洋服もインテリアもコーディネートに正解がないように、いろいろな家具を試して模様替えすることで、自分にとって理想の空間を作り上げています」
伝統的な製法で作られている服や家具職人の担い手が減り、技術の継承が難しくなっている昨今。伝統品の未来のためには、作り手の顔が見えるようなアイテムを選ぶことが必要だと今関さんは語る。
「今までは安価な家具を買って、引っ越しの度に手放して新しいモノを手に入れていたのですが、それがもったいなく感じて。作った人の想いが込められたアイテムを吟味して、それを長く愛用することが大切です」手放すときは、なるべく友人に譲る、フリーマーケットなどで売買を。いいモノが必要としている人に届くような循環が理想だと話す。
古着好きが嵩じて、ヴィンテージ家具収集へ。
今関さんの古いモノ好きやその収集のルーツは、“古着”にあるという。「衣装部屋にある洋服は全部で300着ほど。仕事柄どうしても多くなってしまいがちですが、なるべく長く着続けられる洋服だけを厳選して買うようにしています。扉付きのクローゼットにしまうとどこにあるかが分からなくなってしまうので、突っ張り棒を使って全体を見渡せるように。リビングと違って、人をあまり招かない場所なので機能性重視ですね」
現在の家具選びや空間づくりの原点は、洋服ブランドのディレクションをするようになって、服づくり製法や生地について調べるうちに家具や小物にも興味を持つように。
「家具も服も、アーカイブされた過去の作品を見るのが好きです。職人の作るアイコニックな椅子よりも、全然有名じゃないモノに惹かれるときもある。古着業界では、現状はまだヴィンテージの価値はないけれど近い将来そう呼ばれるポテンシャルのある服を“グッドレギュラー”と呼びます。僕も、作られた年代や作者でプレミアがついているようなヴィンテージではなくても、シルエットや縫製のきれいなモノに価値を感じてつい集めてしまいます」
衣装部屋の奥まったスペースをデスクとして活用。服が仕事道具でもあるので、すぐ近くにデスクを設けたのは便利だという。
毎日のコーディネートも、インテリアの配置も、何度も悩んでは、入れ替えて決めるタイプだという今関さん。日々の仕事の合間に行う模様替えが、頭のリフレッシュにもつながっているそうだ。
「多いときは週に1度くらいのペースで模様替えをします。正解のないパズルを解くように、とりあえず動かしては考える、を何度も繰り返し。そういった意味でも、今回の家ではどんな家具でも溶け込むようなウッド調のインテリアを主軸にして、模様替えを楽しめるような空間を意識しました」
理想は、生活感を抑えたギャラリーのような空間。
ウッド調の家具が多いとどうしてもほっこりした雰囲気になってしまいがちだが、今関さんの部屋全体は、洗練された都会的な空気をまとっている。リビング、ダイニングキッチン、寝室がワンルームで繋がっているにも関わらず、生活感を感じさせないのには、どのような工夫が隠れているのだろうか?
「家の中で一番生活感が出てしまうのは、寝室。リビングの間にパーテーションを立てて、外からはあまり見えないようにしています。ベッドの周りにもサイドテーブルを置かずにすっきりと。仕事で訪れたハウススタジオを参考に、ベッドにラグをかけたり、配線をなるべく隠したりして、ギャラリーのような空間にしたいと思っています」
また、バス・トイレなどの水回りが木目調の壁を隔ててリビングから見えないのも、生活感を抑えているポイントだ。
部屋のいたるところに並んだ本やレコードにも、こんなひと工夫が。
仕事の資料としてよく読んでいるというアートブックは、あえてブックシェルフを使わずに、背表紙を隠して床積み。趣味のレコードと並べることで、インテリアとしても成立している。
ヴィンテージアイテムは壊れてしまうことも多いが、リペアをして長く使うことで、より愛着が増す。モノを愛でながら、ジャンルレスに織り交ぜていく今関さんの正解のない家づくりは、これからも続きそうだ。
- Photo/Hisanori Suzuki
- Text/Uno Kawabata(FIUME)
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