- おひげとゆーかさん(アウトドアインフルエンサー)
- 広島県在住。夫婦そろってキャンプをはじめとした外遊びを愛する。全国各地でのキャンプの様子や、アウトドアがすぐそばにある暮らしの様子、ファッションについてなどをSNSで発信している。
- Instagram - @yuuca__home
平屋で庭にテントを張れるほどの広さを確保。
北は知床から、南は屋久島まで。これまで長期休みや週末が来るたび、広島から愛車とともに国内各地のキャンプ場へ向かっていたおひげとゆーかさんご夫婦。
最初は、おひげさんからのキャンプの誘いを「虫が出るのもお風呂に入れないのも嫌だったから…」と断ったというゆーかさん。Instagramで見かけたおしゃれなキャンプスタイルがその印象を塗り替えた。
「イメージしていた野生的なキャンプとは違って、インテリアとして楽しんでいる方の写真がたくさん出てきました。“これなら楽しそう”と思って一度行ってみたところ、完全にドはまりです」
焚き火やランタンの灯りの美しさに感動したり、朝起きてすぐ目に飛び込んでくる緑の清々しさに驚いたり。そうした鮮烈な感覚は、ゆーかさんを自然とキャンプへ導いた。
大自然の中で楽しむ時間はすぐに2人にとって日常の一部となり、自身でもキャンプを楽しむ様子をInstagramで発信するように。家を建てることを考え始めた際も、キャンプをしている気持ちになれるような場所を自然と求めるようになったとか。
「平屋で庭にテントを張れるくらい土地の広さがあること、周囲に自然が程よくあって住宅が密集していないことが大きな条件でした」
土地探しに約2年を費やし、ようやく出会った現在地。「ロケーションも重視していましたが、ここは山の稜線が美しく見えるところが気に入っています。キャンプ場にいるかのような景色が目の前に広がっているので、庭でのキャンプがとても気持ち良いんですよ」
外と中をシームレスにつなぐ、“山小屋”をイメージした空間。
庭だけではなく、家の中でも「キャンプをしているような感覚で過ごせる」ことが2人の理想の暮らし。一歩部屋へと入ると、木をふんだんに使った温かみのある空間が迎えてくれる。
「イメージは、自然と調和した“山小屋感”のある家。なので建材には主に無垢材や湯布珪藻土などの自然素材を多く使っています。梁も製材されたものではなく、あえて皮つきの木にしています。今はまだ全体的に白っぽくて新しさがありますが、これから時間を経て飴色に変わっていくのが楽しみです」
家づくりにおける素材の選び方ひとつとっても、キャンプと通じるところは大いにある。
「キャンプ道具は、木やレザー、真鍮など時間が経つごとにどんどん味わい深くなる素材のものを選んでいます。だから月日とともに深みの出る家を目指しました。暮らすことで味が出たらいいなと思っています」
ドア下キックプレートやスイッチカバーも、経年変化が楽しめる真鍮製。キャンプ仲間である真鍮作家「K&D MARKET.」に依頼し、作ってもらったものだそう。
平屋の中心部分を担うリビングダイニングの横には、ひと際大きな窓が存在感を放つ。
「美しい山の稜線が家の中からでも楽しめるように、メインの窓を大きくしました。景色を遮らないために、中央にサッシが走らない一枚の窓にしているんですよ。他の窓もすべて景色を楽しむために工夫を凝らし、借景を大切にしています」
景色をまるで絵のように切り取り、家の中に居ても外の気配を感じられるこの空間。開放感も相まって、チェアに座ってゆっくりと過ごすひと時は2人にとってお気に入りの時間になっている。
時間を選ばず、思い立ったらすぐキャンプ。
例えば、平日の仕事終わりでもキャンプがしたいと思えばすぐ庭にテントを張れる。時間のある週末はなおのこと、外で朝ごはんやバーベキューを楽しむことも多いという。この家で暮らし始めて、「ますますキャンプがすぐそばにある日常になった」という2人。
「私は朝の時間帯が特に好きなんです。朝一番にウッドデッキに出て大きく空気を吸い込むと、“あ、キャンプ場で吸う空気と同じだ”って。ウッドデッキに入り込む木漏れ日の揺らぎを見るのも心が落ち着きますね。チェアに座って山々がきれいな稜線を描くのをよく眺めています」とゆーかさん。
一方、おひげさんは「僕は夜、薪ストーブの前の床でゴロゴロするのが至福の時間です(笑)。家の中で焚き火をしているような感覚で、火はずっと見ていても飽きないんですよ。雪が降るくらい寒い日の朝には、薪ストーブの前でコーヒーを飲む。それもすごく贅沢な時間ですね」
キャンプと日常をつなげる、暮らしのアイテム。
家具や食器、インテリア雑貨なども、少しずつ集めてきた2人の好みのものを暮らしに取り入れている。
「県外へキャンプに行ったときは、必ずヴィンテージショップやうつわ屋、雑貨店に立ち寄ります。実はキャンプ道具もこうしたお店で買うことが多くて、家の中でもアウトドアでも使えるアイテムを少しずつ集めてきました」
夫婦ともに服好きで、ウォークインクローゼットには2人分のワードローブがズラリ。すべて掛ける収納にして衣替えいらず。
「普段着る服とキャンプで着る服は特に分けず、汚れを気にせず使えるアイテム選びをしています。私たちにとっては、服も日常とアウトドアをつなげてくれるもののひとつかもしれません」
もう一つ、おひげさんが大切にしたのがアウトドアをしやすい動線を組み込むこと。
「駐車場から玄関、そのまま庭へとつなぐ土間をつくって、靴のまま自由に行き来できるようにしました。玄関横にキャンプ道具を収める部屋があるので、道具の出し入れも楽ちん。庭へも気軽に出られます」
キャンプも日々の暮らしも、手間を楽しむ。
この家に住み始めて約1年。あえて完成していない状態でこの家に住みはじめ、そこから少しずつ手を加えてきた2人。
「庭の芝生も自分たちで張ったんですよ。今後は庭に木をもっと植えたり小屋を建てたり、内装もDIYしていきたいと考えています。大変ですけどその分愛着が湧きますし、手間を楽しむ生活っていいなと思うんです」
考えれば、キャンプは手間を楽しむもの。愛するキャンプと日々の暮らしをつなぐこの家で、一つひとつの手間をたっぷりと楽しみ、家を育てていく時間が今の2人の日常を彩っている。
- Photo/Masahiro Ohno
- Text/Akane Sumida
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